その83 海藻フィーバーフォーエバー by外巣 ページ10
ー外巣sideー
「ねえ、咲紗看守ちゅわん……。」
俺は勇気を出して話しかけた。
「どうしたの?」
作業をしていた咲紗看守ちゅわんが振り向く。
いつも心の内にしまっていたこの疑問を、とうとう口にする日が来たのだ。
「俺の髪って、ワカメ?」
唐突な質問に彼女は言葉を失い、返事をすることができないようだ。
沈黙が俺たちを包み込む。
しばらく考えた後に彼女は口を開いた。
「そうね……。以前はワカメそっくりだったけど、最近はあんまり似ていないかな。どちらかといえばおにぎりの具のコンブに似ている気がする。」
咲紗看守ちゅわんの返事で俺は確信した。
俺はもうワカメじゃない、ということを。
しかし結局のところ海藻以外にはなることができないようだ。
あのヘアワックスの使用を止めてもダメだとは……。
俺には海藻と共に生きる運命しか残されていないのだろうか。
「咲紗看守ちゅわんは、海藻、嫌い?」
恐る恐る尋ねると、彼女は首を横に振った。
「全然そんなことないよ!以前のワカメな君も、今のコンブみたいな君も、どちらも素敵だと思うよ。」
そう答える彼女の顔は少し赤くなっている。
俺がじっと見つめると、咲紗看守ちゅわんは恥ずかしそうに顔をそむけた。
場の雰囲気に任せて、彼女の顎を優しくつかんで俺の方を向かせる。
「どうしてそっぽ向くの?俺だけを見ていてよ。」
自分の口から出たとは思えないような言葉に、我ながら驚いた。
でも大丈夫!
だって最近なぜか顔面偏差値が上がってきたのだから。
これなら、ひょっとすると咲紗看守ちゅわんを……。
俺は勇気を出して思い切った行動に出た。
「咲紗看守ちゅわん、俺のこと好き?彼女になってくれる?」
だが、俺がその言葉を言い終わる前に無線機が耳障りな音を立てて鳴った。
応答するために逃げるようにして部屋を出る咲紗看守ちゅわん。
俺は一人、取り残された。
空調の音が静寂を満たしてゆく。
季節外れな冷気に包まれて、俺は大きなため息をついた。
その84 乾燥の間奏に by紺布→←その82 超ナイスなワープ機能 byかぐや
8人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅葉姫 | 作成日時:2024年2月18日 20時