とある看守長のカオスな日々３ (ページ8)

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その８１　混沌とした空間　　by林ページ8

倉庫で在庫整理をしている。

数日後の販売会で売る物の数を確認しているのだ。

これで、ある程度は収益が予想できる。

そんな時に私はふと思いつき、そして声に出して言った。

『社長は今頃どうしているかな？』

すると、隣で同じように在庫の確認をしていたかぐやが固まった。

「芽依はもしかして社長の事が……。」

『うん、嫌いだよ！』

「え！？」

予期せぬ返答にきっと彼女は驚いたであろう。

ここは詳しく説明しようじゃないか。

『昨日も暗黒物質を盛られたんだ。しかも未知の作用があるやつ！』

「また？」

『お土産だって言われて渡されたの。かぐやは何か貰わなかった？」

私がそう言うと、彼女は少し考えてから言った。

「あ、あれね～怪しかったから林にあげちゃったよ。」

怪しいと、林にあげるんだ……。

何も知らず実験台にされる林に、少しばかり同情してしまう。

でもそれは私達も同じか。知らないうちに社長の実験台にさせられる。

『林は大丈夫だったのかな？』

「大丈夫みたい。棚の陰に隠れてこっちを見ているし。」

彼女が指さす先にはマッシュルームカットの不審者……林がいた。

彼はじっとこちらの様子を伺っている。

『不審者！ストーカー！』

私が叫ぶと、林はバツが悪そうに姿を現した。

おそらく彼は物資運搬のために明星刑務所へ来ていたのだろう。

用事が終わったなら、早く帰ればいいのに。

「かぐやの後をずっと隠れながら追っていただけだよ。とにかく、これからかぐやに告白するから黙っていて。」

何が“とにかく”なのだろうか。

「どういう状況？」

かぐやは戸惑っている。

『こういう状況。』

勿論、私も戸惑っている。

林はかぐやへの愛を熱く語り始めた。

「硫黄アンモニア塩素臭素チキンツルーンゴrrrrrrrリラによる催眠術が解けたその時、気付いたんだ。君の可愛さに。それからというもの、どんな瞬間でも君のことが頭から離れなくなったんだ。以前は確かフラれたけど、今はもう君の気持ちが変わったと信じているよ。大好きだ、付き合ってくれ。……ってあれ、かぐやはどこ？」

『自室に帰ったよ。』

可愛そうな林。

夢中になっていたので、かぐやが途中でいなくなったことに気付かなかったのだ。

しかも額にマジックペンで「ごめんなさい」と落書きされているし。

……面白いから言わないでおこう。

「そんな……。かぐやちゅわ～ん！！」

急に某ワカメみたいな口調になるの、やめてほしい。