その80 社長、目下逃走中。 by主人公 ページ7
「朝だよ〜起きて〜!!」
聞きなれた声、肩に置かれた誰かの手の感触で私は目を覚ました。
ここはどこだっけ。
__ああ、明星刑務所にある自分の部屋か。
さっきまでのは夢だったのかな。
「打合せの時間になっても来ないから、心配していたんだよ。」
まだぼんやりとしている頭に結菜の声が届く。
『ごめんね。疲れて眠っていたみたい。打合せは結菜がやってくれたの?』
「うん。特に変わったこともなかったし。……あ、社長から伝言があるんだ。」
社長からの伝言、と聞いて私は身体を硬直させた。
このタイミングでのは良い内容だったことがない。
「『あの暗黒物質は後で確認したところ未知の作用が発見された。変な物を飲ませてごめん。』だって。」
背筋を寒いものが伝った。
あの暗黒物質?どの暗黒物質?
もしかすると私が昨晩飲んだ“お土産”のことだろうか。
そういえば、あれを飲んでから何かがおかしかったような……。
『彼は今どこにいるの?ちょっと話をしてこないと。』
ベッドから起き上がりながら結菜に尋ねると、彼女は首を横にふって答えた。
「社長なら、打合せ後すぐに終焉刑務所へ行ったよ。」
思い出した。
社長は末期クズに関する実験のために、今日から終焉刑務所に泊まるんだった。
……彼奴、逃げたな。
***
『ところで、結菜……。』
「ん、どうかした?」
私は起きたときから気になっていたことを彼女に質問した。
『私さ、クズになってる?』
「全然そんなことないよ〜!どうしたの、急に?」
『いや、何でもない……。』
あの出来事が夢だとわかってからも少し不安だった。
けれども、今の答えを聞いて安心した。
私はまだ一般ピープルとして生活することができそうだ。
そして、社長、マジで許さん。
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作者名:紅葉姫 | 作成日時:2024年2月18日 20時