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小さな悩み ページ12

「3日後までにアピールを考えてこいって言われてもなぁ」
夕食の終わり、彼らから言われたことだ。『口上』、それに『ポーズ』……。改めて考えてみても何も浮かばない。悩んでいる途中はなぜか最悪なことばかり考えてしまうようで、
「もしかしたら私、向いてないんじゃないか?」
思わずそう呟いてしまった。元より人前に出るのはあまり得意ではない。人類でも何でも、大勢が群れているというのは、とてもじゃないが心地いい環境ではなく、そうでなくともとにかく人類は苦手だ。ああ、どうしよう。
 薄暗い廊下を歩きながらぼやく。こんな感じの思考を、おそらく15分間くらいずっと続けているのだ。
「まだそこで続けてんのか、お前」
目の前のドアが突然開いて、呆れ顔の彼が現れた。
「あ、ジョー……」
「いい加減腹をくくれって。俺だってやりたくねーけど、お前が『何とかなる』とか言ってたからやってんのによ。食事ン時の覚悟はどうしたんだァ?」
「それが、口上とかが全く思いつかなくて、私は向いてないんじゃないかと心配になってしまって……」
あからさまに面倒くさそうな顔をした彼は、私の頭を軽くはたいて続けた。
「おま、そりゃ変に凝るからだろ……。お前の職業は何だ、A」
「えーと、アースラ様のメイド兼弟子、ですね」
「そこがはっきりしてんなら、ポーズはメイドっぽさを全面に押し出したやつだな。分かりやすいのが一番だ」
俺だって「8」の字をモチーフにしてるんだから、とりあえずそれで考えろ、とまたはたかれた。ちょっと、痛いってば。
「あと口上? それも自分がやってる仕事をそれっぽく紹介すればいいだろ。俺の聞くか? 『あなたのお悩み何ですかァ? ……』」
「なるほど……! アドバイスありがとうございます、ジョー!! おかげでいいものが作れそうです!」
「おう、がんばれがんばれ」
とても適当な(第三者の意見である)励ましの言葉を受け取り、自分の部屋へ戻る。5、6人は眠れそうなベッドに腰掛け、さっきまでの鬱々とした悩みはどこへやら、驚くほどすんなりと決まった口上、そしてポーズを反復した。
「にしても、ジョーのアドバイスは的確だったな……。いつも側についているからか? よく見てくれてるんだな……。すっかり立場が逆になってしまった」

そうだ、海行こう_1→←本題に入ろうか



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(プロフ) - 緋焔さん» もちろんです!!わざわざ返信ありがとうございます! (2017年5月20日 23時) (レス) id: a503537b5d (このIDを非表示/違反報告)
緋焔(プロフ) - 紫さん» 大好きなんて!嬉しいです!!これからも応援よろしくお願いします! (2017年5月20日 23時) (レス) id: 384f0aa109 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します! 群れの会話の時のヌタウナギとか面白すぎますww大好きです!頑張ってくださいっ! (2017年5月20日 23時) (レス) id: a503537b5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緋焔 | 作成日時:2017年3月12日 1時

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