キス魔の轟君。【轟焦凍】 (ページ10)

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キス魔　8 ページ10

*

「俺がかかっていた“個性”は「薄弱」だ。」

『...はく、じゃく...？』

いきなり“個性”の説明をする轟君。
...私が思ってたのと、なんか違う。

「本人に聞いた。我慢の反対の意味らしい。」

嘘じゃねぇ。とあとから付け足す。

...わかってるよ。

真後ろから聞こえるその暖かい、真剣な声が、
嘘なわけがない。

「俺はお前が好きだ。それが“個性”で我慢
できずに爆発したんだ。悪い。」

『...じゃあ、私に、キスしたのは、？』

そう呟くと、肩を持たれ180度目線が変わる。

びっくりして上を見れば、真っすぐ光る2色の
オッドアイの瞳。
赤く染まる、轟君の頬。

私、泣いた後だから顔ぐちゃぐちゃだ。

そんな事も考えられないくらいに、私は今、
目の前の轟君に惹かれている。

「俺が我慢できなかったからだ。」

少しいたずらっぽく、妖しい微笑み方をする
轟君。
...なんで、笑ってるのかは、聞かなかった。

なんとなくわかるの。
今、私の顔真っ赤だから。

かわいいな。なんて言う轟君に、
うるさいっ、。と返しながら視線を合わせる。

すごい、さっきまで見れもしなかったのに。
もう、お互い笑顔だ。

「勝手にしちまって、わりぃ。」

『...もう、いいよ。謝らなくて。』

「もう嫌いか？俺の事。」

『たったの数分で、嫌いになるわけないもん。ばか。』

「...好きだ。A。」

『...私も、』

.

『好きだよ。焦凍君。』

さっきまで泣いていたのが、嘘みたい。

優しい優しいその笑顔が、私は好き。

ﾎﾟｽｯ、っと轟君の胸に頭を預ける。
そうするとすぐに、頭を撫でてくれる。

わぁっ、すごい、安心感...。

「...嫌われたら、どうしようかと思った。」

『“個性事故”って聞いて、ショックだった
なぁ。』

「...わりぃ。」

『ﾌﾌｯ、すき。』

顔を上げて、轟君と目が合う。

火照る私の頬に、轟君が右手を添える。
少しひんやりしてて、でも暖かくて。
好きだなぁ、なんて思って。

「キス、していいか。」

『...勝手にしてたじゃん。』

.

ちゅ

.

轟君の柔らかい唇が、私の唇に触れたとき、

優しいリップ音が小さく教室に響いた。