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夜も遅いため、エントランスに人はいなかった。
エレベーターに乗って、ふわりと体が上に浮くような感覚を感じ、少しの気持ち悪さを覚える。

全く、これだからエレベーターは苦手なんだよね。


静かなフロアに二人の足音だけが響く。

「ここらでいいよ、それじゃばいばいー」
「ぁっ、ああ。…勉強、頑張れよ。」
「何回言うのよ、わかってまーす。」


終わってしまう。
勇気を出して、言いたかったことを、言わなければ。
伝えなければ。
喉にでかかった言葉は、簡単に出てきてはくれない。
でも、これで良いのだ。
これで、

鍵を差しこみ、ドアをガチャリと開ける。

「……なぁ」
「どうしたの?」

真っ直ぐで、真剣な目が私を捉えた。
瞬間、私はその場に縛りつけられる。

囚われてしまうのだ。

足は、動いてくれない。

「話がある。」
「……」

なに?と言うつもりが、声が掠れて出てこず、吐息だけで返事をした。
頬が熱くなる。
心が落ち着かない。

黒尾さんは黙ったまま、私を見つめている。


その目に、恋の色が滲んだことに、気づく。

私は、息を飲んだ。
そして、察してしまった。
黒尾さんの頬も赤くなっている。
私は、気づいた。
彼が、何を言おうとして、私を呼び止めたのかを。


「……好きです。」
「……」
「付き合って、下さい。」

黒尾さんは腰をおって、お辞儀をするような格好をした。
そして、手を伸ばした。
きっと、その手を握り返せば、肯定、と彼は取るのだろう。


ああ、でも。

その手を握らない、なんて選択肢は、きっとない。

「私で、良ければ…」
黒尾さんの手を握り返した。
自分の手が凄く湿っていることに気づかされる。


また、抱きしめられる。
でも、前より、ずっと強く。
「……ホントか?」
「…うん、嘘、ついてない。」
「ホントのホント?」
「幼稚園児か、嘘ついてませんってば。」
「……やべぇ、めっちゃ嬉しい。」
「そう?」
「あぁ、凄く嬉しい。」
「……私も、嬉しい…よ、」

私はそろそろ暑苦しくて堪らなくなったので、体を引き剥がした。
でも、体にまだ黒尾さんの感触が残っている。
なんだか、不思議な気分だ。

「私達って、もう恋人同士なの?」
「あぁ、今日からな。」

黒尾さんの視線がくすぐったい。
「……なんか、不思議だなぁ。実感沸かない。」
「確かにな、
じゃあ実感沸かせるためにキスでもしてみるか?」
「はあっ!?しっ、しないっ!しませんっ!」

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立花 - 腫れ物じゃなくて、このシチュなら壊れ物じゃないの (2020年3月16日 6時) (レス) id: 9b35e00014 (このIDを非表示/違反報告)
@でに(プロフ) - いつの間にか6500hit突破…ありがとうございます!というかアニメ4期の告知的なPV見ましたか!?ホントに宮侑くん顔が良すぎる……口角が上がりすぎて無事どっかに飛んでいきました。 (2019年12月27日 0時) (レス) id: 4e6a48575b (このIDを非表示/違反報告)
@でに(プロフ) - 5000hitありがとうございます。 (2019年10月20日 19時) (レス) id: 4e6a48575b (このIDを非表示/違反報告)
@でに(プロフ) - 順位更新ありがとうございます。 (2019年7月11日 19時) (レス) id: 4e6a48575b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:@でに | 作成日時:2019年4月5日 0時

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