37 友好 ページ37
さて。
スマホを渡したAは、キョロキョロと辺りを見回した。
手は確実に縄をほどいているが、足はさすがに無理だろう。
Aは走って逃げるにしても、足の速さ的にも体力的にも、ジンにくらべたら圧倒的に不利だと判断する。
長年ベルモットに育てられたことで、Aは冷静に周りを判断できた。
ジンは煙草の煙をフーッと吐き出すと、こっちを見た。
「…何食いたい」
「え?」
「腹減ってるだろ」
ぶっきらぼうなジンの口調だが、その気遣いに感謝して、「カツ丼」と正直に答える。
体型を職業柄気を使っているベルモットと暮らしているため、カツ丼などはあまり食べていない。
「フハッ」
「(兄貴が笑ってる…)」
「なんで笑うの、ジン」
少し不貞腐れたように言うAに、わるいわるいと言っているが、ジンはやっぱり笑っている。
「第二のベルモットじゃなくて助かったぜ」
「…どーせ、ママほど美人じゃないもん」
つーんとAはそっぽを向きながらも、記憶喪失のベルモットを思い出して、チクリと胸が痛んだ。
ドン。
Aは目の前に置かれたカツ丼と、目の前にいるジンにめちゃくちゃ驚いていた。
食べ物を食べるんだったら縄をほどいてもらえると思っていたが、「逃げるとも限らねぇ」といって、ジンが箸をもっている。
「ほら、口開けろ」
「…い、頂きます」
カツ丼を届けてくれた下っ端と、ウォッカは目の前の光景を二度見したのは余談である。
「おいしい」
Aがもぐもぐしながらそういうと、「…意外と素直だな」と、半ば驚いたようにジンが言う。
数時間前は銃をむけられ、むけていた相手とはとても思えない打ち解けぶりだ。
Aは案外馴染んでいた。
周りがライとかバーボンとかベルモットとか、そんな人ばっかりだったので、ジンを大して怖いとは思わなかったのである。
ジンはジンで(ベルモットの娘なら下手に扱わねえほうがいいか)と考えていたし、純粋にAを気に入ったので、普通に喋っていた。
「ジンの髪キューティクルやばい」
「あんま気は遣ってねえんだけどな」
「…ママが聞いたら起こりそう、女の敵って」
「想像できるな」
「洋服バリエーションかえたら?」
「あぁん?」
「黒白って不審者感すごいもん」
「…」
もはや誘拐の図ではなかった。
それを聞いた赤井と安室とベルモットが爆笑するのは、そう遠い未来ではない。
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泉 - 久しぶりに来たら続きが更新されててうれしい🎵⤴️ (2023年1月5日 13時) (レス) id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
泉 - ベルモットも人間 (2023年1月5日 13時) (レス) @page50 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
かのん - ベルモット大好きだから嬉しい❤️ (2022年1月22日 11時) (レス) @page48 id: 23ecb5b22b (このIDを非表示/違反報告)
リリィ - 晴雫丸さん» それな!! (2019年9月17日 21時) (レス) id: 14d9286bf4 (このIDを非表示/違反報告)
S・T(プロフ) - 皆の溺愛行動を見てると…自分がその場にいたら…『貴方達…何やってんですか(苦笑)』…って、思わず言いますねf(^^; (2017年12月27日 15時) (レス) id: fd942f87f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モノクロ猫 | 作成日時:2017年8月24日 23時