進んで悪になり得たか。 (ページ43)

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eighty seven ページ43

その日の夜は宴だった。

私達の釈放日かつ、組の再興を願って。

「いやぁ、茉莉もとうとう大人の仲間入りっすか。なんだか俺らがオッサンに見えてしまいやすね」

クロノさんがジョッキを煽りながらそう呟いた。

『それ、刑務所出る時も廻さんと話してました。三十路越え…』

「おい」

「いやぁ、歳のことは考えたくないですよ。ねぇ組長」

「なんで俺に話を振るんだ」

ワイワイとつまみを食べ、酒を飲みながら雑談を交わしていた。

『音本さん、本当にお久しぶりですね！』

「そうだな。…見た目も、大人びたな」

『えぇ、そうですか？それは嬉しいですね』

「昔がガキ過ぎただけだ」

『なんだとミミックゥ！』

ギャーギャーとミミックさんと戯れあって、酒が程よく回ってきた。

『はぁ…少し外の空気吸ってきます』

私は部屋を出て、縁側に座った。

満月だった。

時間的には真っ暗なはずなのに、月明かりに照らされ辺り一面が明るい。

世界は、私が知らないうちに平和になっていた。

どうせなら、弔の戦いに加わっても良かったのかな、なんて思ってしまうほどに平和ボケが進んでいた。

でも、私はあの時彼に着いていかなくて良かったと思っている。

今では弔とAFOは引き離され、AFOは様々な後遺症により死亡。

弔はまだ若者で、ヴィランでありAFOの被害者でもある、ということで死刑は免れた。

ただし、タルタロスから出ることは一生不可能ということ。

つまり、無期懲役である。

私はそれを深く惜しんだ。

もう一度、彼に会いたい。

こうして皆とワイワイ楽しくやっていたものの、頭の隅にあるのは彼のことだった。

最初はもちろん憎かった。

なんせ廻さんの腕を持って行った人だったし。

でも、次第に仲間に対する優しさ。

目標への強い信念。

それが私の心を動かしてしまったのだろう。

私は意外と惚れやすいらしい。

『はは…馬鹿みたいだなぁ』

勝手に憎んで、愛して、裏切って。

私は振り回されていたのではなく、案外私が彼を振り回していたのかもしれない。

一度会って話がしたい。

絵空事だけれど、あるかもしれなかった話を。

『…決めた』

明日、電話をしてアポを取ろう。

どこに電話をかけるか、って？

もちろん、タルタロスに。