進んで悪になり得たか。 (ページ39)

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「あの…えっと…」

『えり、ちゃん』

そして、デクとルミリオンがいた。

『なんで…』

「えりちゃんが、意を決して来たんです」

「…お姉さんは、悪い人だけど、悪い人じゃなかったから…」

『私は、悪い人だよ』

廻さんは、何も言わずずっと下を見ていた。

『貴方のことを助けようとしなかった。それだけで、十分立派なヴィランの理由だよ』

「でもっ…」

「壊理…」

ついに、廻さんが口を開けた。

「っ…」

「今まで、悪かった」

デクとルミリオンは、驚いた顔をしていた。

「俺の…私情でお前を利用してしまった。親父は、それを望んでいなかったのに…俺が、先走ったせいで何もかも失った。…何もかも、俺が悪かったんだ」

ぽつりぽつりと言葉を放つ。

その顔は、罪悪感で押し潰されそうだった。

「もう、俺らはお前の人生に関与しない。それだけで償えるとは思っていない。…だが、一つだけ俺らの望みを叶えさせてくれ」

えりちゃんは、固唾を飲んだ。

「親父を、元に戻してくれ。それだけが俺らの望みだ。
親父に会えたなら…謝れたなら、それからなんだってする」

『お願いします。…死で償う覚悟もあるんです。この道で生きてきたから…』

「それは、ダメ…！」

えりちゃんは、悲しそうな顔でこちらを見つめていた。

「死ぬなんか、言っちゃだめだよ…！」

『…でも』

「生きてたら、楽しいことなんていっぱいあるんだよ…私も、デクさんやルミリオンさんにいっぱいもらった。笑顔のやり方を教えてくれた。だから…死ぬなんか、言っちゃダメだよ」

ガラスに、彼女の小さな手をつけた。

『…わかった。死ぬなんて、もう言わないよ』

私も、彼女の手と重なるように手をつけた。

「…デクさん、ルミリオンさん。この人達の、おとうさんのところに連れていってください…！」

「ほんとに、大丈夫？」

「大丈夫…もう、大丈夫だよ」

私は、彼女の成長力に驚いていた。

彼女の精神力は、私達が思う以上に成長していた。

話を聞いていた看守は、私達を一時的に解放した。

そして、別々の車で組長の元へと向かった。