進んで悪になり得たか。 (ページ37)

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eighty one ページ37

私は、彼の口を抑えた。

『…だめ』

「なんでだよ」

『まだ、だめ』

彼は私の顔を見て、無理だとわかったのだろう。

私から離れて、この場を去ろうとした。

『ねぇ』

「なんだよ…まだ用か」

『また、会おうね』

今度は、ちゃんと貴方である時に。

そう言うと、彼は悲しげな顔をしてこう言った。

その日は来ないかもな。

すると、彼はこちらに来た時のように、いつの間にか姿を消してどこかに行ってしまった。

わかっていた。

こんな条件をつけてしまえば、弔に会うことは二度と出来なくなることに。

しばらく立ち尽くしていると、後ろから声がした。

「茉莉ッ！」

『廻さん。…私は無事ですよ。大丈夫です』

「だが来たんだろっ…死柄木弔が！」

『はい。少し、話を、してました』

「…なんで、泣いてるんだ」

『…そりゃ、悲しいからですよ』

正直、彼と、もっと話したかった。

趣味の話、友人の話、将来の話。

たくさん、話したかった。

でも、今の私や彼では本音で話し合える気がしない。

だから、私は彼から離れることを決意した。

『まだ、好きで好きで、しょうがないのに…！愛してたのにっ…！』

馬鹿だなぁ、私は。

つくづくそう思わされる。

結局、私は何もかもから逃げてしまうんだ。

『なんで、こうなっちゃったのかなぁ…！』

自分を責めれば責めるほど、涙が溢れ出てくる。

普通に生きることを許されなかった。

普通に生きることから、逃げてしまった。

その罰なのだろうか。

『廻、さん…どうしたら、いいんでしょうねっ…』

廻さんは、何も言わなかった。

2週間後、私達を含めた全囚人が別の刑務所に移動された。

そこは、クロノさんがいる刑務所だった。

私達は再会を噛み締めた。

そして、良いことがあると、悪いこともあって。

私と死柄木弔が会ったのは、2週間前のあの時が最後だった。