進んで悪になり得たか。 (ページ34)

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seventy eight ページ34

「おい、どういうことだ茉莉…！ふざけるのも大概にしろ…！！」

『ふざけてなんかないです、大真面目です』

何故私達がこんな朝早くから言い争っているか。

「アイツらと面会するなんざ、イカれたのか！」

『んなわけないでしょう！これもかれも、組長と廻さんの為なんじゃないですか！！』

「だからといって、あのヒーロー達を呼ぶ事はなかっただろう…！」

私は前夜、看守にヒーローデクと、ルミリオンとの面会を求めた。

看守が、私達が反省したと見て早急に連絡をしてくれたらしい。

その結果、返事が既に来ていて、今夜こちらに向かってきてくれるらしい。

それを、今朝初めて廻さんが知ってこの怒りようだ。

『いいですか！！彼らがエリの気持ちをよくわかっているんです。彼らに認められずに組長が救えますか！？』

「それはッ…」

『…認めましょう。彼らが、ヒーローだってことを。でなきゃ、一生このままです』

「…」

私の足は、どうだっていい。

義足があるから歩ける。

けど、組長はそうにはいかない。

彼女の力が必要なのだ。

私や廻さんじゃ救えない。

だから、私は彼らを呼び寄せた。

彼らなら、救ってくれると信じて。

そして、時間がきた。

静かな空間に、私と廻さんが座り、透明な壁を隔てて空席が二つ。

私は、向こう側の扉が開くのを待った。

廻さんは、あれからずっと黙ったままだ。

そりゃそうだろう。

彼らのおかげで何もかもの計画が台無しになり、やられた結果腕を失った。

覚悟も必要だろう。

しかし、そうは言ってられない。

人は、いつか腹を括らなければいけない時がくる。

きっと、今がその時なのだ。

その時、向こうの扉がギィ、という音を立てて開いた。

緑の髪と、金髪の髪が揺れているのを見た。

私はすぐさま頭を下げた。

『お忙しい中、貴重な時間を私達二人に下さり、誠にありがとうございます』

「…いえ、大丈夫です」

「貴方が、茉莉さんなのかな？」

『はい。治崎茉莉です。…廻とは、血縁関係ではありません。組長が、私を拾って下さりました』

「通りで…髪も目の色も、あまり似てないんだよね！」

『…本題に入らせていただきます』

私は席から立ち、床に頭をつけて土下座をした。

『誠に勝手なお願いではありますが…エリさんに、会わせてほしいのです』

その瞬間、空気がピリっと凍りついた。