進んで悪になり得たか。 (ページ27)

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seventy three ページ27

『ん…』

私は頬に触れた冷たい何かに驚き、目を覚ました。

手で触ってみると、冷たい雫だった。

どうやら、雨が降ってきたらしい。

私は立ち上がると、不思議な感覚に襲われた。

私から見て左の方。

あっちの方に、何かがある。

何か、とは全然検討もつかないが、ただ…懐かしいものだ、というものはわかった。

私はその感覚につられ、足を動かしていた。

銃声のような音が飛び交っている。

聞きなれたはずの音なのに、何故か焦燥感が体から溢れてきた。

私は一つの建物の前で止まった。

この屋上に、何かがある。

私はドアをこじ開け、階段を駆け上った。

『はぁっ、はぁっ』

どうして、こんなに急いでしまうのか。

私にもわからなかった。

そして、ついに屋上への扉に着き、私は思い切り戸を開けた。

『はぁ…はぁ…。…！！』

私は、屋上にいる人物を見た瞬間、涙腺が緩んだ。

『廻、さ…』

向こうも私を視界に捉えた。

すると、今まで見たことないような顔でこちらに駆け寄ってきた。

『え、廻さん…わっ…！？』

私に突撃するかのような勢いで、その膝から下がない腕で私のことを目一杯抱きしめた。

「茉莉…茉莉…！！」

私は、どうしたらいいのかわからなかった。

顔をチラリと見ると、彼の蕁麻疹が出てきている。

でも、彼から抱きついてきたのだ。

私は、同じように彼を…廻さんを、強く抱きしめた。

『廻さん…やっと、会えましたね』

「無事で…良かった…！親父は、親父はどこにッ」

『わからないです…でも、廻さんの無事が知れてよかった』

冷たい雨が降っていたのにも関わらず、その場所はずっとずっと暖かく感じた。

そして、彼の後ろに見た光景。

ヒーローと、誰かが戦っていた。

『彼女は…』

「親父の元に連れて行ってくれるやつだ…それに、あのガキは…俺を…」

私は廻さんを離し、屋上の淵に立った。

あの、緑色のヒーロー。

どこかで見たことある気もするが、そんなことはないと頭を振る。

『アイツさえ、殺せられれば…！？』

私は、自分の手を凝視した。

『毒が…出ない』

そういえば、AFO…彼は、"個性を交換する"と言っていた。

まさか、本当に…。

私は銃を取り出して、残り一発の弾を込めた。

私は、あのヒーローをよく狙った。

しかし、彼の動きは俊敏で中々撃つことができない。

『クソッ…！』

その瞬間、こちらに弾が飛んできた。

それは流れ弾などではない。

意図的に、こちらを狙ったものだった。