後日談「兄貴」 ページ32
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「お前さあ、やっぱり兄貴は向いてないよ。」
静寂に包まれた病室では、掠れた低音の声はよく響いた。
「ああ、俺も……そう思う。」
振り下ろした腕からするりと魔法のステッキが抜け落ちて、そのまま床へと落ちた。
間抜けな音。
思わず笑いが込み上げた。
「ばかみたいだよな。俺の苦労はどこへ行ったんだっての……。」
「こうなったら仕方ないよ。もう一回、アイツらを傍で見守るしかないんじゃない?」
はあ、と深い溜め息が出た。
「早く終わらねえかな……。」
「元々アイツらに魔術の存在を教えたのはお前でしょ。自業自得。」
「は、お前だって……。」
隣へ視線を寄越して、思わず目を見開く。
隣の男の表情が軟らかいものだったからだ。
「でも俺、正直ホッとしてるよ。だって、またアルフレッドやAに会えるんだろ? もう、二度と会えないと思ってたから……。」
「……そんなの、俺だって……って何言ってんだよばか!!」
「ちょっ、酷い!」
グーパンチを一発繰り出してから、もう一度深い溜め息を吐く。
自然と、口角が上がっていた。
「……まあ、アイツらが幸せならそれでいいか。」
そうしてまた、悪夢は止まらない。
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作者名:ひまり@靴下 | 作成日時:2016年2月20日 17時