第十話「傍観者」 ページ11
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そう、俺はそうやって悲劇を繰り返してしまった人物を知っている。
『____を助けられるんだったら、俺の命なんかどうなったって構わないんだ。』
確かに、お前はアイツを助けたかったのかも知れない。大好きなアイツの為なら命さえ惜しくなかったのかも知れない。
それでも、それが遺されたお前の一方的な感情だということを忘れてはならない。
自分が身代わりになれば、なんて。
たとえば、相思相愛の恋人同士の男女がいたとする。女が不慮の事故で命を落とした時、女を救える魔術の存在を知った遺された男は、果たしてどんな行動に出るだろう。
そう、身代わり。言い換えるなら自己犠牲。
自分が身代わりになって愛する人を救えるなら、と途方に暮れた奴は考える訳だ。
しかし、命を落とした方の女はどうなるのか。
愛する男を失い、更に男を救える魔術の存在を知ってしまったら。
「大体、お前らは優し過ぎるんだよ……。もしお前らがもっと自分を大切にしてりゃ、こんなことにはならなかったはずなのに。」
この悪夢を食い止めるには、片方を犠牲にしなければならない。
「だから、お前には絶対にこの魔術を使わせられないんだ。」
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作者名:ひまり@靴下 | 作成日時:2016年2月20日 17時