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「思いつめた憂い顔がこれ程月夜に生えるとはな。」
Aは驚いて振り返った。
そこには本来の姿のぬらりひょんが立っていた。
だがAは彼が誰なのか分からない。
「あんたは年が若くても綺麗な事は変わらんな。」
ぬらりひょんはAの顎を掴み自分の方に向けた。
「ワシはお前が欲しい…。」
ベッドに押し倒された。
「今は抵抗する術は無いか…」
そう言ってベッドからぬらりひょんが降りた。
下からAを呼ぶ母の声がした。
「“ぬらりひょん”人はワシをそう呼ぶ。あんた面白いな、また来るぞ。」
Aはその言葉に驚いた。
『(今のは夢?それとも現実?分からないわ。)』
Aは時計を見て寝ぼけてるんだと思いベッドにもう一度入って寝た。
それからAは予知の力で外ではぬらりひょんに会わない様に動いていた。
小学校から帰る時リクオの父親の鯉伴に声を掛けられた。
「夜桜Aちゃんだよね。」
『えっと?リクオ君のお父さんですよね。』
「俺の怪我を治してくれたの君だよね。」
Aは一瞬だけ目を逸らした。
「有り難う。」
鯉伴は自分の母が前世の事を覚えてない事を理解してAの頭を撫でて帰って行った。
「(帰って来てくれた事は嬉しいが寂しいな。)」
鯉伴は家に寂しそうに帰って行った。
家に帰っても落ち込んでいるのを皆が気が付いていた。
首無は気になり声を掛けた。
「鯉伴様。何かございましたか?」
「うん?うん。ちょっとな。」
「相談して下さい。」
「もしもだけどよ。自分の知り合いが帰って来たのに自分の事を覚えていないって場合どうしたらいいと思う?」
「其れは……記憶喪失って事ですか?」
「そうじゃ無くてな。でも記憶は無い事は分かってる。」
鯉伴は首無にどうしたらいいか相談した。
「はぁ。」
「今出来る事は時間を掛けて思い出して貰う事です。なので、待つ事ですね。」
「待つか。あの人が待ってるような人かよ。人じゃないか。……そう言えば昨日の夜親父何処かに行ってたか?」
「そうですね。お戻りは早かったですが。」
「へぇ。珍しいな。」
「しかも楽しそうでしたよ。」
鯉伴は首無の言葉に眉間にしわを寄せた。
「親父が楽しそうだった?」
「はい。」
「はぁ。親父が行ってた所が分かったわ。」
「えっ?分かったのですか?」
「分かったわ。でもそんな高い頻度で出掛けたりはしないだろうけどな。」
だが鯉伴の予想を反してぬらりひょんは良く出掛けていた。
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作者名:彩夏 | 作成日時:2023年8月27日 23時