【鬼滅の刃】鬼を以て鬼を制す 弐

九十話:優しい人2 ページ46

炭治郎side






『つらいね...普通ならまだ、親に愛されて
守られている筈の歳なのにね...
一人で鬼になった妹の事も抱えて...

家族も失って...悲しかったね
つらかったね』


炭「...っ」



抱き締められながら優しく頭を撫でられて
思わず泣きそうになる


『我慢しなくていい、泣いていいよ』



その言葉に今まで我慢してきた思いが、悲しみが
ドッと頭の中を支配して
しまいには、涙が溢れだしてしまった

声を出さないようにしながら涙を流す



今だけは、甘えても...いいよな

俺はAさんの背中に手を回して
幼い子供の様に泣いた









暫く泣いて、気持ちが落ち着き
息を整える


炭「すみません、もう大丈夫です」

『ほんと？』

炭「はい」


『...わかった』





そう言ってAさんが離れる

すると＿＿



『炭治郎は、ちゃんと家族を守ってね』

炭「！！」


『きっと、炭治郎と禰豆子が生きている事が
親孝行になるし弟や妹も願ってる筈だよ』




すると、少しだけ悲しみの匂いがした
特に“家族”や“親孝行”という言葉を出した時に

もしかしてAさんも...



炭「Aさん、悲しんでますか？」

『...！』


炭「さっきから、優しさの中に悲しみの匂いが
します。特に家族とか親孝行って言った時に」




少しだけ驚いた顔をしてから微笑むAさん


『ふ、はははっ、悲しい匂いって...
炭治郎は鼻が利くんだね

...うん、悲しいかな
私もね、家族を失ったんだ
血の繋がった家族はもう誰一人居ない』


炭「...！！」




『けどね、新しい家族が居るんだよ
鱗滝さんや家族が居る所が
私の帰る場所なんだ』


と、すごく嬉しそうな、優しい笑みを浮かべる





『その“家族”の中には、炭治郎と禰豆子も
居るよ』

炭「...え」


『勿論、迷惑だったらやめるけど』

炭「そんなっ、迷惑じゃありません！！」

『家族ごっこだって思わないの？』


炭「Aさんは優しいから
それに、Aさんはとても家族を大事に
してると思うから

家族が増えるのはすごく嬉しいです」


『...！そっかぁ
なら、炭治郎の事守らなきゃね』

炭「え？」

『子供は大人に甘えときなさい』




と言ってからかうように笑いながら
歩いていくAさん


炭「ちょっ、待ってください！」







俺はAさんの背中を追いながら
山を下りた





父さん、母ちゃん、花子、竹雄、茂、六太


俺、帰る場所が出来たよ

すごく、優しい人が家族になったよ

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