月が綺麗ですね【中原中也短編集】

今日だけ、特別＊ハイド様リク ページ6

現代文の授業。
別に嫌いじゃない。

嫌いじゃないけど、今日は特別。

"いいんだ、今日くらい。"

そう言って、屋上への扉を勢いよく開けた。


＊＊＊


先程降った雨の匂いが微かに残る、空が一番近くに思える場所。

もちろん其処に先客などいない。

集団生活の場で、ふと1人の空間になるといつもと違うことをしたくなる。

それは私に限ったことじゃないと思う。
誰もが、束の間の1人の空間を楽しみたいと望むだろう。

段々と気分が上がってくる。

先刻までの気分が嘘みたいだ。

真っ黒だった空も、今や青く澄みきった色に染まっている。

空は、まるで私の気持ちのよう。


貴「耳を澄ますと微かに聞こえる雨の音」


ふと何気なく、小さい頃から好きな曲の歌詞をそっと呟く。


貴「想いを綴ろうとここに座って言葉探してる」


止まらない。
あの人を少し想っただけなのに、止まらない。

そこからは早いものだった。
段々と音程がつき、リズムがついた。

そしていつの間にか、大声で、歌っていた。


貴「探していたものは、目の前にあった」


夢中になって1曲歌いきった。

その場に残ったのは、雨で湿ったコンクリートの匂いと、少しの虚無感。

はぁ、とため息をつき、空を見上げる。
先刻よりも少し雲が濃くなり、小雨が降り始めていた。


｢意外と、いい声してんのな｣


後ろから聞こえた低音。
それもよく聞き覚えのある声で、思わず身が固まった。


貴「………ちゅ、中也…」

中「よう、サボり魔さん」


出入り口の上に胡座をかくソイツは愉快そうに笑っている。

最悪だ。生きてきた中で一番に最悪だ。
よりによって幼馴染(好きな人)に歌声を聞かれるなんて。


貴「…いつからいたの」

中「空が晴れたときから」


ちゃんと最初から聞いてたんじゃん。
病みそう。


中「で、手前ェは誰を想って、歌ったんだ？」

貴「っ…」


中也は意地悪い笑みを浮かばせる。
本当は全部、判ってるくせに。


貴「…貴方じゃないダレカ」

中「ふーん、相ッ変わらず素直じゃねェのな」


まぁいい。と中也はその場に寝転ぶ。


中「そこ、濡れてンだろ。
此方乾いてるから来いよ」

貴「…」


私は黙って中也の隣に寝転んだ。
此方の方が空が近く見える。



中「今日は一日中、こうやって過ごしていようぜ」


いいだろ？と中也。


貴「今日だけだよ、今日だけ。」




＿＿＿空には、虹が掛かっていた。



＊＊＊


ハイド様リクでした！

ちょっとゴチャゴチャしてる…？

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