. ページ17
sk side
ab「…俺じゃ、ダメなの」
その声に驚いて顔を上げれば、思った以上に近くにいたあべちゃん。
動揺しながらも何か言わなきゃと思って息を吸った瞬間、ふに、と何かが唇に触れた。
「…へ、？」
ab「深澤？照？それとも、舘さん？」
「な、なに、わかんないよ、」
ab「佐久間は誰を思ってるの」
じりじりと詰め寄ってきて、いつもと違う彼の雰囲気に狼狽えることしかできなくて。
俺は、阿部ちゃんが好きなのに。
そんなふうに言われて、キスされたら、阿部ちゃんも同じ気持ちなのかもって自惚れちゃう。
ab「……それとも、俺？」
阿部ちゃんの瞳がゆらりと揺れた。
寂しそうに、悲しそうに。
「……そう、って言ったら、？」
拒絶されるのが怖かった。
阿部ちゃんは優しいから、きっと言葉にはしないだろうけど。
ゆっくりと、やんわりと避けられて、疎遠になってしまう方がよほど俺の心を抉るだろうから。
けどさ。
俺、あべちゃんを前にしたら、嘘つけないの。
驚いたように目を見開いた後、嬉しそうに笑った。
俺の頬に触れたあべちゃんの右手は、暖かい。
ab「…嬉しい。佐久間が俺を思ってくれてるなら、本当に」
「あ、あべちゃ、」
ab「もし、そう言ってくれるなら、俺も好きだよ、って答えるかな」
「あべちゃん！」
うれしくて、ぴょんっと飛び跳ねて抱きついた。
軽く俺を受け止めた阿部ちゃんは、ぎゅうって抱きしめてくれて。
その暖かさに、ちょっぴり涙がでた。
ab「さくま、俺のこと好き？」
「すき、大好き。あべちゃんは？」
ab「俺も好き」
何度も何度も、確かめるみたいに。
10年と少しの分の愛を、ゆっくりじっくり届けるみたいに。
おれとあべちゃんはかわんない。
そう、ふっかに言ったことがあるけれど、多分これからも変わんないんだと思う。
ただ、一緒にいるための理由が増えるだけ。
そう、それだけ。
ab「…ね、佐久間？」
「ん、？」
甘くてやさしい、クラクラしちゃいそうな阿部ちゃんの声。
ab「これからも、よろしくね」
少しだけ離された距離。
阿部ちゃんの顔がよく見えて、優しさが暖かくて。
こちらこそ！って伝えるように、もう一度阿部ちゃんに抱きついた。
さようなら、昨日までの片思い。
『昨日にエンドロールを』
Fin.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 760人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鯱(プロフ) - わたたいさん» すみません、こちらの物語の設定での病のお話はお受けできないです。せっかくコメントしていただいたのにお答えできず、申し訳ないです。 (11月9日 18時) (
レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
わたたい(プロフ) - 鯱さん» 病でも大丈夫ですか？ (11月8日 22時) (レス) id: 1f79981bd4 (このIDを非表示/違反報告)
鯱(プロフ) - わたたいさん» こんばんは。読んでいただきありがとうございます！先にリクエストの内容を教えていただいてもよろしいですか？内容によってはお答えできないかもしれません。返信お待ちしております。 (11月8日 22時) (レス) @page17 id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
わたたい(プロフ) - 鯱さん» こんばんは!リクエスト大丈夫ですか？ (11月7日 23時) (レス) id: 1f79981bd4 (このIDを非表示/違反報告)
鯱(プロフ) - 空白さん» ありがとうございました！！ゆっくりにはなりますが書いていきますのでよろしくお願いします！！ (9月27日 23時) (レス) @page10 id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鯱 | 作成日時：2023年8月10日 13時
