. ページ12
ab side
「…連絡つかねー、」
2日前に送られたメッセージ。
それに既読の文字はつかない。
その事実にどうしようもなく焦って、仕事帰りに佐久間の家に突撃した。
大丈夫、きっと笑って出てきてくれるって、そう思ってた。
「…は、？」
どんなに押したって開かない扉。
何度も鳴り響くインターフォンの音に、迷惑そうに出てきたのは隣の部屋の住人だった。
“____そこの人、ひと月前に出ていきましたけど”
「なんで、」
また消えた。
俺の周りから、大切な人が。
翔太と会わなくなって10年。
やっと再会できたっていうのに、今度は佐久間がいなくなってしまうの？
慌てて中学から付き合いのある深澤に連絡をして、佐久間の居場所を聞いた。
ついでに、連絡をとってくれ、と。
俺が何かしたのかもしれない。
無意識のうちに佐久間を怒らせて、それで。
最後に会ったのはいつだっけ？
最後のメッセージはいつも通りの佐久間らしい文章で、それにスタンプで返信して。
それが俺たちのいつも通りだった。
fk『佐久間？連絡してみるけど、新居は知らねーよ？てか阿部の方がよく知ってるっしょ』
「…知らねーよ、」
佐久間のこと、全部わかってたつもり。
どんな時に笑って、どんな時に泣くのか。
何をしたら彼が怒るのかだって知ってて、ほんとの笑顔も、取り繕った笑顔も全部知ってる。
だけど肝心な、彼の心の中は一度も読めたことがなくて。
読み取ろうと見つめてみても、簡単に交わされてしまう。
佐久間はそういう人だから。
佐久間の職場は知ってる。
けど、もし俺から逃げているのであれば。
俺が会いに行って、佐久間は喜ぶのかな。
dt「阿部？」
「え、」
dt「何してんの、傘は？」
気付かぬうちに雨が降っていたようで、俺のスーツを濡らしていた。
自分の傘に入れてくれる舘さんは心配そうに俺を見つめた。
「…佐久間、知らない？」
dt「は？佐久間？」
「そう、佐久間。どこにいるか知ってる？」
dt「どこって…阿部が知らないのに俺が知ってるわけなくない？」
「…だよね」
ふっかも、舘さんも。
佐久間と出会ったのは15の時で、俺たちの中でその前の佐久間を知っている者はいない。
ただ鮮明に覚えているのは、今の佐久間はいなかったってこと。
ずっと隅でアニメを見てて、クラスでは本当に目立たない存在で。
ダンスをしている時以外の表情は暗いものだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 760人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鯱(プロフ) - わたたいさん» すみません、こちらの物語の設定での病のお話はお受けできないです。せっかくコメントしていただいたのにお答えできず、申し訳ないです。 (11月9日 18時) (
レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
わたたい(プロフ) - 鯱さん» 病でも大丈夫ですか？ (11月8日 22時) (レス) id: 1f79981bd4 (このIDを非表示/違反報告)
鯱(プロフ) - わたたいさん» こんばんは。読んでいただきありがとうございます！先にリクエストの内容を教えていただいてもよろしいですか？内容によってはお答えできないかもしれません。返信お待ちしております。 (11月8日 22時) (レス) @page17 id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
わたたい(プロフ) - 鯱さん» こんばんは!リクエスト大丈夫ですか？ (11月7日 23時) (レス) id: 1f79981bd4 (このIDを非表示/違反報告)
鯱(プロフ) - 空白さん» ありがとうございました！！ゆっくりにはなりますが書いていきますのでよろしくお願いします！！ (9月27日 23時) (レス) @page10 id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鯱 | 作成日時：2023年8月10日 13時
