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sk side
さよならを告げるための、受け入れる時間が欲しかったかな。
でも世の中はそう簡単に待ってはくれなくて。
明日になれば一変してしまう、俺たちを見る目。
その恐怖にこれからも君を巻き込む勇気なんかこれっぽっちもないんだよ。
dt「佐久間、」
震えた涼太の声。
そんなふうに俺の名前を呼んだのは、初めてだった。
苦しい。
苦しいくらいに涼太が好きで、でも俺のこの気持ち一つじゃ許されない感情で。
俺の布団をゆっくりめくった涼太と目があって、顔を見たらもうダメで。
神様、どうか。
今日だけ許してください。
dt「大介、」
ぐい、と。
涼太を俺の布団に引き摺り込んで、跨るような体勢をとる。
sk「…抱いて、」
dt「大介？」
sk「今日が終わるまで、一緒にいて。“最後の思い出”を頂戴」
世界に許されたいなんて思っちゃいないけど、俺と涼太の世界が今日で終わってしまうなら、最後の一分一秒までそばに居させて。
今日、涼太の気持ちも全部引き受けるから。
涼太が明日から苦しまないように、泣くなんてことないように。
2人きりの思い出も、お揃いの気持ちも、全部俺が大切に持っていくから。
縋るように、キスをした。
閉じた瞼からは涙が溢れて、苦しかったけど、それでも涼太と触れ合っていたくて。
うっすらと開けた視界には、涼太の綺麗な涙も映し出されていて。
全てを諦めたんだ、俺たちは。
明日からも強く生きていくために。
この感情も、今日で終わり。
あと、4時間と30分。
最後の最後まで、俺に触れて、求めて、愛してほしい。
俺を噛み締めるように俺の肌に触れた涼太の手は震えていた。
おれのカラダのいいトコロも、おれのしてほしいコトも、全部知ってるのは涼太だけ。
いままでも、これからもずっと。
慣らされてないソコは、涼太の指もモノもはっきりと覚えてる。
こんなに苦しい状況でも、触れられたらすぐ思い出せて、喜べるんだから。
もう2度と訪れない、苦しくて幸せな時間。
俺とあなたの幸福論。
“9人の空間”を守るための“選択”。
これは間違っちゃいない。
誰も悪くない。
ただ恋に落ちて、どうしようもなく溺れただけ。
Fin
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作者名：鯱 | 作成日時：2023年8月9日 15時
