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ru side
自分が意地を張ってることぐらいわかってる。
だけど。
ﾊﾞｻﾊﾞｻﾊﾞｻｯ
生徒「うわ、センセー何してんの！」
kj「山田くんがぶつかってきたんやで！廊下は走らんの！」
生徒「はぁい。ごめんねせんせ」
kj「んふ、ええよ！ほら、チャイム鳴るで！！教室戻り！」
にこにこ。
向井先生は誰にでも笑顔で、優しくて。
それ故に、損をするような人で。
だってほら、今抱えてる荷物、自分の担当教科じゃないものだもの。
ru「…はい」
kj「ありがとう！って、村上くんやん！チャイム、」
ru「へーき。後で先生が事情説明してくれればいいだけですもん」
kj「でも、」
ru「俺はね、困ってる人を放っておけるような性格じゃないんです。これどこ持ってくんですか？」
kj「数学準備室、やけど、」
ru「なんだ、俺の教室の隣じゃん。一人でこれ持つってさ、先生、もうちょっと生徒のこと使ってもいいんじゃない？」
kj「あかんやろそれは。ってちょっと！」
ru「どうせ隣なんだしいいじゃん。授業、阿部先生だから向井先生が事情説明してくれないと困るんです」
とっくに授業開始を告げるチャイムは鳴り終えていて、今一人で戻るよりは遥かにマシ。
それに、なんだかんだで放っては置けなくて。
kj「…ありがとう」
向井先生が抱えていた荷物の半分と少しを奪い取って、一つ上の階へと歩き出した。
kj「村上くんは優しいな」
ru「先生は可哀想な人ですよね」
kj「なんや、可哀想て」
ru「こうやって、何でもかんでも引き受けちゃうから良くないんです。損する性格してますよね」
kj「下っぱやねんから、“仕方ない”んやて」
へらりと笑う。
あの頃の笑顔とは程遠い。
仕方ないの一言で済まされるのが、なんだか気に食わなかった。
ru「仕方ない、なんて。そんなの言い訳にすぎません」
kj「しゃあないやん。なってしまったもんは仕方ないんやから」
ru「…大事な記憶だって、落としてきちゃうんですもんね」
kj「……は？なんでそれ、」
ru「そのことだって、どうせ“仕方ない”で済ませてるんでしょ」
無性に腹が立って、余計な一言だってわかってて。
でも、止まれなかった。
いや、止まる気がなかった。
kj「……自分、何言うてるん」
向井先生の低い声。
立ち止まったのがわかって、怒ってることはひしひしと伝わってきて。
自分が発した言葉を、後悔した。
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作者名：鯱 | 作成日時：2023年8月9日 15時
