・ ページ17
nb side
もう解放されたかった。
俺とのことは全部忘れて、自由に生きていいよって言ってやりたかった。
ただ、たった数時間でも彼の人生を奪ってしまったことの責任から逃れたかっただけ。
つくづく自分勝手。
でもそうすれば、涼太は自由になれるだろ？
なのに、お前は。
掴まれた手が熱くて、離してほしくなくて。
どうしようもなく独占欲が湧いて、控えめに握り返した。
そしたら、もっと強く握るから。
なあ、なんで追いかけてきたの。
そんなに俺が離れるのが嫌なの。
俺、勘違いしちゃうよ。
先ほど閉めたばかりの扉がまた開いて、強引に引き込まれる。涼太に引っ張られたまま慌てて靴を脱いで、リビングに入った。
ふわりと鼻をくすぐる、大好きな匂い。
dt「…翔太は、俺じゃなくていいの」
nb「は？」
何を言ってるんだ。
俺はずっと、お前じゃなきゃ嫌で、お前の隣も俺じゃないと許せなくて。
だから、こうなったのに。
dt「翔太は、俺のこと一度も好きじゃなかった？」
ゆっくりと俺の頬に触れた涼太の手は震えてて、冷たかった。
なんで、そんな苦しそうな顔するんだよ。
nb「…俺は、、」
dt「…翔太が好きだよ。だから終わりたくない。翔太の心が欲しい」
思いがけない言葉に息が詰まる感覚がした。
ずっと向けられたかった感情。
ずっと、欲しかった言葉。
返事しなくちゃいけないのに、言葉が出ない。
dt「……泣かないで」
涙が溢れて仕方なくて、でもどうにか伝えたくて。
身体だけじゃない。心も全部、涼太のものだって伝わるように、涼太の手首にキスをした。
nb「…れも、すき。ずっと好き。大好き」
dt「ほんと、？」
nb「ん、涼太が好き。俺だって、本当は終わりたくない、」
苦しそうな顔から一転、ものすごく嬉しそうに微笑んで、ぎゅっと俺を抱きしめた。
俺と違って逞しいその腕の中は、暖かくて。
ずっと知ってたけど、ずっと欲しかった。
こんなふうに、俺だけを愛して、守って欲しかった。
dt「離れるなんて言わないで。ずっと俺のそばにいて」
nb「いる。もう離してやんねーから」
dt「もちろん。今更離れる気なんてないよ。今までずっと一緒だったんだから」
始まりは幼稚園で、漫画みたいな再会をして、恋に落ちた。
道は間違えたけど、今幸せなら。
だったらさ、それでいいよね。
nb「離すなよ」
dt「当たり前」
また一から始めていこうか。
Fin
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 453人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鯱 | 作成日時：2023年8月9日 15時
