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dt side
ずっと俺の軸には彼がいた。
だから、かな。
嫌だとも、関わりたくないとも思わなくて。
彼が望むなら、俺はそうするべき。
そんな思い込みが心のどこかにあったんだと思う。
俺と翔太は、運命共同体だから。
終わりにしたいと言う言葉が、何を指しているのかはわかっていた。
わかったからこそ、言葉が出なくて。
翔太を繋ぎ止めておくための言葉を、俺は知らなかった。
ねえ、なんて言ったらいい？
俺を求めた翔太に、俺が愛した翔太に。
好きだって、そう伝えたらよかった？
黙った俺をよそにたくさんの言葉を並べて出て行った翔太。
…本当にこれで終わり？
翔太はそれでいいの？
俺は、それでいいの？
dt「っ！！」
こんなふうに焦ったのは、何年ぶりだろう。
いつもだったら丁寧に履く靴を適当に履いて、携帯も持たず飛び出した。
初めて彼を抱いた日。
翔太は俺になんて言った？
与えられる快感に飲まれながら、涙をこぼして不器用に笑った。
俺の頬に手を伸ばして、苦しそうに、嬉しそうに。
たった一度だけ、好きって呟いた。
その感情が俺に向けられていることぐらいわかっていた。
わかった上で、俺も好きだと伝える機会を伺って。
だけど。
伝えようとするたび彼の苦しそうな表情が浮かんで、
呼び出されるたび抱いてくれと誘われて、
朝起きると何事もなかったようなそぶりを見せるから。
俺は自信を無くして、気づいたら半年以上経っていて。
伝えるのを、諦めた。
楽屋で絡んでくるわけでも、ただなんとなく一緒に過ごすことも、食事だけしに行くこともなくて。
俺と翔太の関係は側から見れば何も変わっていなかった。
dt「待って！」
nb「え、」
dt「待って、聞いて、」
nb「な、なんだよ」
dt「ちゃんと話したい。ここじゃアレだから、うちに」
必死に走って、戸惑う翔太の手を掴み家まで引き返す。
ごめん、離してやれない。
俺はね、翔太。
もう今更戻れないんだよ。
だってもう、何年も翔太をただの幼馴染として見てなかったんだから。
だからどうか、もう一度君に伝えるチャンスをください。
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作者名：鯱 | 作成日時：2023年8月9日 15時
