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nb side
もし仮に、彼にちゃんと正面から好きだと言えていたら。
この関係が作り上げられることはなく、それでも受け入れられることもなく。
ただ一言、ごめんと言われただけだったと思う。
本当はわかってる。
涼太の気持ちは俺には向いてない。
それが苦しくて、でも諦められそうになくて。
俺の感情だけで突っ走ってしまった。
わかってんだよ。
もう終わりにしなきゃいけないって。
誰にも言えない秘密の関係を無かったことにしてやらないと、俺も涼太も前に進めないってことも。
彼と2人きりの世界なんて、最初からどこにも存在してなかったんだから。
1年間、2週間に一度のたった数時間だけ作られた小さな世界を与えてくれたを感謝しなくちゃいけない。
nb「…もう、終わりに、したい」
自分勝手でわがままな俺を許してください。
あなたはきっと、怒りも悲しみもしないだろうけど。
こんな重役からやっと解放されることを、きっと心のどこかで喜ぶんでしょう？
彼の顔は見れなかった。
たった数秒の間が生まれて、それが怖くて。
まだ玄関。入って1分経たずに俺が発した言葉はしっかりと響いた。
涼太の言葉を待たずに、さっき彼が開けた扉に手をかけた。
nb「悪かった」
nb「俺のわがままで始まったことなのに、一年もずるずる付き合わせて」
nb「もう、大丈夫。巻き込んだりしてごめん」
nb「こんなつもりじゃなかったんだよ、ほんとは」
nb「舘もさ、苦しかっただろ」
nb「これからはもう、こーゆーのないから」
nb「もう、普通の幼馴染に戻ろう」
nb「他の奴らと何も変わんない関係でいよう」
何も話さない涼太の間を埋めるように、つらつらと饒舌に動く口。
俺らしくない。
俺ららしさはかけらもない。
nb「…じゃあ、また」
涼太の声は最後まで聞こえなかった。
扉が閉まるギリギリまで。
ほんとは期待してた。
何か言ってくれるんじゃないかって。
同情でも、なんでもいいから。
涼太からの言葉が欲しかった。
そんなことを願うあたり、きっと俺はまだわがままな俺のまんまだ。
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作者名：鯱 | 作成日時：2023年8月9日 15時
