・ ページ2
fk side
阿部ちゃんは俺によく聞く。
“どうして俺なんかと一緒にいてくれるの”、なんて。
そんなのこっちのセリフなんだけどな。
ab “深澤くん、だよね？よろしく”
初めて会ったあの日。
俺は阿部ちゃんに心を奪われた。
いかにも頭良さそうな彼は、誰かを下に見ることも傷つける言葉もなくて。
心の底から優しさが溢れてる。そこにいて一切動かない、植物のような柔らかさを感じた。
来るもの拒まず、去る者追わず。
そんな印象があったんだ。
想いを告げたのは出会って一年が経った頃だった。
どうにか彼のそばに行きたくて、あの手この手を使って彼との時間を過ごした。
阿部ちゃんは優しいから、一度も拒んだりはしなかった。
だけど流石に、このお願いは無理なんだろうなぁなんて諦め半分で伝えた想いに、一切否定せずちゃんと向き合ってくれた。
阿部ちゃんだけなんだよ。
俺のわがままをバカにせず受け入れてくれるのは。
学生時代はずっと聞き手役に回ってた。
その方が嫌われないから。
笑って聞き入れて、受け入れて。
そうやって居場所を確立させたときには、もう俺は“何を言っても受け入れてくれる優しいヤツ”でしかなくて。
少しでも弱音を吐けば、誰かに頼ろうとすれば、引き攣った顔を向けるクラスメイト。
だから、諦めた。
誰も聞き入れてはくれない本音は俺の中だけでぐるぐる回るだけになって、それが当たり前で、苦しくて。
けど、阿部ちゃんだけは。
俺のわがままも本音も弱音も、聞いてくれるから。
それだけじゃない。いつしか阿部も俺を頼ってくれるようになっていて。
そんな関係を無くしたくないって思ったんだ。
fk「…ふは、可愛い」
俺だけの天使。
誰にもあげない。渡さない。
ab「ん、たつ、」
fk「はいはい」
俺を探すように彷徨った手は俺より大きいけど、背だって遥かに俺より高いけど。
俺ができる精一杯でお前が生きやすい世界をここに作るから。
fk「ちゃーんと俺の隣にいてよ。隣に阿部ちゃんがいないと俺、苦しくて息できねーかも」
俺の生きる意味でいてよ。
そのために隣にいて。
俺だけのあべちゃんでいてよ。
Fin
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 453人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鯱 | 作成日時：2023年8月9日 15時
