ちいさなほし fkab ページ1
＊社会人
ab side
fk「阿部ちゃんコレ」
ab「あ、ども」
ノールックで通りすがりの俺に資料を渡すのは彼だけ。
深澤辰哉。年は一つ上だけど同期で、営業部のエースだ。
kj「阿部さーん、プレゼン資料用の写真これでええですか？」
ab「…うん、ばっちり。ありがとね」
kj「広報でカメラマンしてんの俺なんでね！いつでもこき使ってください！阿部さんのためならいつでも働きますよ〜！！」
調子のいいことばかりを言っている向井康二は嵐のように去っていった。商品開発部の部屋に篭りっぱなしの俺だけど、なぜか俺に懐いた彼はよく手伝いに来てくれる。
正直助かるけれど、この空気の中の彼は少し眩しすぎる。
fk「おつかれーっす」
ab「お疲れ様です」
fk「佐藤さんいます？」
ab「あー、今日お休みですね」
fk「あ、まじすか。了解でーす」
同期といえど会社での会話はほとんどない。
それがいつも通りで、当たり前で。
見るからに陰キャな俺と、エースで明るくて人気者な彼が一緒にいるところなんて見られたらきっと、会社中が驚きで満ちるだろう。
…ましてや、裏を見られたら俺はきっと刺されてしまうと思う。
ab「…ただいまぁ、」
fk「おかえり。お疲れ」
ab「ん、ありがと。ふっかもおかえり」
fk「ふはっ！ただいま」
ふにゃりと笑うのは、メガネをかけて部屋着姿になった深澤辰哉。ピシッとしたスーツから一転、ゆるゆるなその姿を見れる立場にいられることに嬉しくなる。
fk「なぁにニヤついてんの。お風呂入ってきな」
ab「あ、うん。食器は俺がやるから置いといてね」
fk「本当？じゃあお言葉に甘えて」
持ちつ持たれつ。
恋人である彼とはもう長い付き合いで。
お互いがお互いのために動いてて、それを苦と思わなくて。
同棲を決めたのは2年前。
それでもなお好きを更新し続けている俺は、随分と彼に惚れ込んでいるらしい。
fk「ん、ドライヤーやったげる」
ab「ありがと」
ふっかのそばは安心する
飾らなくていいから。ありのままを受け入れてくれるから。
ふっかの隣にいる自分だけは、1番好きな自分でいられるから。
fk「ねむそ〜、お疲れだな」
ab「…ん、起きるよ。食器洗わなきゃ」
fk「んは、いいよ今日くらい。俺やっとくし。やっとひと段落したんだろ？もう寝な」
ふわふわと撫でて甘やかしてくれる彼は多分、こういうところがモテるんだと思う。
自分とは真逆な彼との生活は何よりも楽しい。
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作者名：鯱 | 作成日時：2023年8月9日 15時
