揺れる dtnb ページ8
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dt「…もう、潮時かなぁ」
ぽつりと呟いた言葉は宙を舞う。目の前の愛おしい恋人はすぅすぅと寝息を立てていた。
dt「翔太、朝だよ」
起こす気すらないような小さな声。起きないでくれと願いながら、可愛らしく端が上がった唇に指で優しく触れた。
出会ってもう何年?
人生のほとんどに翔太がいて、翔太を知れば知るほど好きになって。気持ちが通じたのは高校の時。そこからゆっくりと恋人になって、キスをして、体を重ねた。中学生みたいなデートをしてみたり、おしゃれなレストランに行ってみたり。翔太となら何をしていても俺らしくいられて。大学を卒業してすぐ、2人で部屋を借りた。
nb “涼太!俺今日ハンバーグ食べたい!”
dt “ふふっ、はいはい。手伝ってね”
nb “おう。買い物行く?車出すよ”
dt “…もう、先寝ててって言ったのに。ソファで寝たら風邪引くよ?”
nb “…んー、、おせーよりょーたぁ”
dt “ふふっ、ごめんね。待っててくれてありがとう”
幸せだった。翔太との何気ない日常が。
おはようもおやすみも、行ってらっしゃいも行ってきますも。
そりゃあ喧嘩だってそれなりにしてきたけど、それすらも今は愛おしくて。泣き顔も、笑ってる顔も全部鮮明に思い出せる。
俺は多分翔太との日々を忘れないし、大切に持っておくんだと思う。手放したりなんて絶対しない。
涼太って、その透き通るような綺麗な声で呼んで。
素の低い声でも怒った声でも、悲しみを含んだ声でもどれでも良いから、もう一度だけ。
それ以上は求めないから。
dt「…朝ごはん、ちゃんと食べてね。フレンチトースト。しっかり漬けておいたからきっと美味しいよ。
…ねぇ翔太。俺がいなくても、ちゃんとご飯食べてね」
翔太はすぐ食生活が乱れてしまうから、出前でも良いからちゃんと食べて。仕事にもちゃんと行って、ちゃんと寝てね。無理だけはしないで。
こんなふうに最後を告げるなんて卑怯だよね。きっと翔太は怒るよね。許して、なんて言わないから、どうか俺と過ごした日々を忘れないで。
dt「…愛してる、翔太」
今まで手放せなくてごめん。どうか、幸せになって。
先ほど指で触れた唇に、触れるだけのキスをした。
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鯱(プロフ) - Lateさん» ありがとうございます!! (6月18日 15時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
Late(プロフ) - 秋の残香めっちゃよかったです!!書いていただきありがとうございます!これからも応援しています頑張ってください! (6月18日 8時) (レス) id: 40f15e1de2 (このIDを非表示/違反報告)
鯱(プロフ) - Lateさん» コメントありがとうございます!書きたい欲が出てきたので挑戦してみます!笑 少々お待ちください!! (6月15日 0時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
Late(プロフ) - コメント失礼します!ずっといわふかの『金木犀』を永遠リピしているのですが、岩本sideも見てみたいなと思いコメント書かせていただきましたー!今後の物語も楽しみにしていますこれからも頑張ってください! (6月13日 11時) (レス) id: 40f15e1de2 (このIDを非表示/違反報告)
鯱(プロフ) - Lateさん» ありがとうございました!また思いついたら続きを書くかもしれません笑 その時は是非お付き合いください! (5月20日 23時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鯱 | 作成日時:2023年4月19日 16時