オレンジとネイル ページ42
照side
「…なにしてんの」
仕事終わり、今日は辰哉のカフェに寄ろうと考えながら外に出れば、そこに立っていたのは長く茶色い髪をなびかせる女性。
元妻「久しぶり」
そう、元妻だ。
「おう。じゃ」
元妻「待ってよ。少し話せない？」
俺の腕を掴んで引き留めた。
離婚して以来一度も会っていない彼女は、随分と服装が変わっていた。
辰哉のカフェ。
ではなく、オフィスの近くのカフェ。
流石に今の住所を知られたくなくて、とりあえず入ったこの店は随分と今どきな店だった。
そんな店に似つかない真っ赤な口紅。
出会ってから今までここまで濃くなったメイクは初めてだ。
元妻「…久しぶりね。亮平は元気？」
「ああ」
元妻「蓮は？あの子寂しがり屋だから大変じゃない？」
にこにこ、にこにこ。
目の前で不気味に笑うその顔に、口角が引き攣る。
「蓮には亮平がいるから。それに、康二も。
あと、寂しがり屋なのは蓮じゃなくて康二だよ。忘れた？」
“康二”
その名前を出せば、一瞬表情がこわばった。
…まだ康二を受け入れられないのか。
元妻「ねぇ、亮平と蓮に会わせて？」
「無理だ。亮平と蓮が望まない限り会わせる気はない。俺が決められることじゃない」
元妻「だったら、亮平に連絡するよう言ってよ」
「亮平は自分の意思で連絡してないんだろ。メールも着信も気づいてる。その辺は本人に任せてるから」
元妻「…っ、、
じゃあせめて蓮にくらい言ってみてよ！」
「蓮はお前をあんまり覚えてないよ」
元妻「っなんで！？」
歪めた表情。
バン、と叫んだ彼女の言葉は、康二と同じように少し変わったイントネーションで俺の耳に届いた。
元妻「なんで！？私がどれだけ2人を愛してたと思ってるん！？やのにっ、、なんでそんな酷いことっ、、！
照…！！どうしてそんなこと言うんよ！！」
焦ったり、イライラしたり。
彼女がそんな感情に振り回された時、必ず関西弁で話す。
標準語に戻そうと、無理をして矯正したその言葉たちはどこかへ行ってしまう。
…なぁ、お前はまだ気づかないの。
康二がどうして、1人だけお前の言葉が、イントネーションがうつったのか。
それに気付けない限り、きっと亮平は君に会いたがらないだろうね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1344人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鯱(プロフ) - ぴぃさん» ありがとうございます…！！めちゃめちゃ嬉しいです！ゆっくり更新ですがこれからもよろしくお願いします！ (9月7日 16時) (
レス) @page47 id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
ぴぃ - 初めてコメント失礼致します。主様の作品全部好きでいつも見てますが、特にこの作品が好きです。家族のお話って年齢設定だったり関係性を書くのがとても大変だと思いますがいつも温かい家庭を見せてくださりありがとうございます。これからものんびり書いてくださいね。 (8月28日 17時) (レス) id: 25bcef5482 (このIDを非表示/違反報告)
ay(プロフ) - naruyuki0501さん» ありがとうございます。自分なりに何度も何度も書き直しながら書いてるのでゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願いします！ (2023年3月14日 18時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
naruyuki0501(プロフ) - いつも、少しずつみてます。自分も色々悩んでるので読んでで支えになります。救われてます。体調に気を付けて、更新していってください。 (2023年3月14日 15時) (レス) @page16 id: ddb2e6c93f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鯱 | 作成日時：2023年2月28日 8時
