キャンバス ページ33
康二side
ｶﾞｼｬﾝ、と家に響いたのはガラスが割れる音。
慌ててキッチンに駆け込めば、そこには蓮の姿。
蓮「ごめんなさい、」
「怪我してへん？危ないからあっち行っとき？」
蓮「……」
「ん？大丈夫やて、一緒にパパに謝ろな」
今この家にいるのは真都くんと蓮と俺の3人で。弟たちを怪我させまいとリビングに促したけど、蓮はなぜか動かなかった。
真「…大ちゃんの、」
小さくそう言ったのは、遅れてやってきた真都くん。視線の先には割れたコップ。確かにそれは、大ちゃんがよく使っていたもので。
「…せやなぁ」
蓮「ごめんなさい」
「大丈夫。康二も一緒に謝るし、大ちゃんにちゃんと謝ろうな」
落ち込んで今にも泣いてしまいそうな蓮の手を握る。真都くんは割れたコップから視線を外すことなく立ち尽くしていた。
うちの空気はずっと悪いまんま。
大ちゃんが突如居なくなって、真都くんと蓮は元気がなくなって。亮ちゃんはよぉ1人で泣いてるし、翔太くんと涼太くんは笑わなくなった。
たつくんとパパも、活気がなくて。
俺もその空気に流されて落ち込んでしまう。この場に大ちゃんが居たらなんて言うんやろな。
きっと、ごめんって謝るんやろう。
大ちゃんは責任を人一倍感じやすいから。
「…亮ちゃん？」
亮「康二、触んないで。ほうき持ってくるから」
いつのまにか帰ってきていた亮ちゃんに腕を掴まれた。
俺は手を引っ込めて、じっと割れたコップを見つめる。
どうして、蓮はこのコップに触ったんやろ。
大ちゃんが帰ってこなくなってから誰も触っていなかったのに。
戻ってきた亮ちゃんは相変わらず真顔のままで。そんな亮ちゃんを蓮は怖がっていた。
大ちゃんがおらん。
その事実だけでこんなにも変わってしまう。
きっと亮ちゃんにとって、大ちゃんは大きな存在やったんやろな。
蓮「……大ちゃんが使ってたもの使って、大ちゃんを感じたかったの、ごめんなさい」
帰ってきたパパに聞かれた蓮はそう言った。
ただ大ちゃんの存在を確かめたかっただけ。ちゃんとここに大ちゃんの居場所があって、いつか帰ってくるって信じたかっただけ。
大ちゃんがいたのは確かだったと、無意識にその証拠を探していたんやと思う。
多分、みんな。
やからカップが割れてしまったことにショックを受けた。
その事実を証明する一つのものがなくなってしまったと。
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鯱(プロフ) - ぴぃさん» ありがとうございます…！！めちゃめちゃ嬉しいです！ゆっくり更新ですがこれからもよろしくお願いします！ (9月7日 16時) (
レス) @page47 id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
ぴぃ - 初めてコメント失礼致します。主様の作品全部好きでいつも見てますが、特にこの作品が好きです。家族のお話って年齢設定だったり関係性を書くのがとても大変だと思いますがいつも温かい家庭を見せてくださりありがとうございます。これからものんびり書いてくださいね。 (8月28日 17時) (レス) id: 25bcef5482 (このIDを非表示/違反報告)
ay(プロフ) - naruyuki0501さん» ありがとうございます。自分なりに何度も何度も書き直しながら書いてるのでゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願いします！ (2023年3月14日 18時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
naruyuki0501(プロフ) - いつも、少しずつみてます。自分も色々悩んでるので読んでで支えになります。救われてます。体調に気を付けて、更新していってください。 (2023年3月14日 15時) (レス) @page16 id: ddb2e6c93f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鯱 | 作成日時：2023年2月28日 8時
