散ったのは、 ページ20
大介side
きゅ、と小さくなって部屋の隅に座り込む。なるべく存在を消して、あの人の目に映り込まないこと。それが俺を守る唯一の術。
男「大介！！」
ﾋﾞｸﾘと震える俺を笑いながら腕を引っ張り、投げるようにキッチンに入れる。これがご飯の合図。
男「早くしろ」
喋ることは許されない。言われたこと以外をすることも許されない。俺の人権はない。
ここに来た日。同じようにされた時、拒否をしたら思いっきり殴られて。簡単に意識を飛ばすほどだった。じんわりと頬が腫れ上がっていくのを感じながら目を覚ましたのはキッチンの床で。本気で殺されると、そう思った。
目を覚ましたのは午前3時。俺は痛む顔を隠しながらみんなが住む家に忍び込み、学校で必要になるものを持ち出した。“学校には行かせる”と言っていたから、それを信じて。涙の跡を付けて眠る2人の顔を忘れないために、頭に焼き付けるように見つめる。学校ではいつも通り、仲良くしてくれたら。それだけで、俺は。
涙で滲む視界。“探さないで”というメモを残し、寝返りを打った翔太が起きてしまう前にそっとあの家を後にした。
男「大介！掃除が甘い！！」
ばさりと投げつけられる洗濯物。せっかく彼の分まで畳んでいたのに、またやり直し。元々器用ではないけど、不器用なりに母がやっていたような畳み方や掃除、料理をしているのに、やっぱり見よう見まねではこの男を満足させることは難しい。
まだここに来て3日。それなのに俺の世界から色は消えた。彼から自分を守る方法なんてわからない。でも俺がここにいることで、辰哉さんたちを守れるなら。
それで、良かったはずなのに。
「っうぅ、しょ、た、りょうたぁ、」
バタバタとうるさい音を立てて男は扉を閉めて出ていく。静かになったこの部屋で、やっと声を出す。
会いたい。助けてほしい。いつだって俺のために駆けつけてくれる2人はそばにいない。どんなに呼んだって、優しい声は届かない。
俺は、一度掴んだ幸せを、手放さないようにと強く握りすぎて散らしてしまったみたい。
散ったものはもう元に戻らない。
あの優しい空間は、まるで桜のように一瞬だった。
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鯱(プロフ) - ぴぃさん» ありがとうございます…！！めちゃめちゃ嬉しいです！ゆっくり更新ですがこれからもよろしくお願いします！ (9月7日 16時) (
レス) @page47 id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
ぴぃ - 初めてコメント失礼致します。主様の作品全部好きでいつも見てますが、特にこの作品が好きです。家族のお話って年齢設定だったり関係性を書くのがとても大変だと思いますがいつも温かい家庭を見せてくださりありがとうございます。これからものんびり書いてくださいね。 (8月28日 17時) (レス) id: 25bcef5482 (このIDを非表示/違反報告)
ay(プロフ) - naruyuki0501さん» ありがとうございます。自分なりに何度も何度も書き直しながら書いてるのでゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願いします！ (2023年3月14日 18時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
naruyuki0501(プロフ) - いつも、少しずつみてます。自分も色々悩んでるので読んでで支えになります。救われてます。体調に気を付けて、更新していってください。 (2023年3月14日 15時) (レス) @page16 id: ddb2e6c93f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鯱 | 作成日時：2023年2月28日 8時
