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光くんはうっとりとそう呟くと、俺が自分を支えるために置いていた左手も取ろうとするから、そこに跪いてされるがままになる。俺が両手で頬を包むと、その上から光くんも手を重ねてきた。
これは熱のせいなのか、それともこの人の素なのか。普段から触れられる事を良しとしないこの人が自ら触れさせるなんて。自分の家に着いて完全に気が緩んでしまっているのかも知れない。自分の冷え症に今回ばかりはありがとうと言いたくなったのと同時に、恐ろしいと思ってしまった。
こんなに可愛い事、普段もしてしまっているのだろうか。
駄目だ、本当に勘違いしちゃうよ。
そんな顔で見ないで。
頭の中ではそう思うものの、俺は思わず親指で頬を撫でてしまった。それを目を閉じて気持ちよさそうにする光くんは、さらに手に擦り寄ってきた。
「あ、ご、ごめんっ…」
俺は自分がした事に恥ずかしくなって咄嗟に手を離した。すると急に離れた手に光くんは寂しそうな目を向ける。
これ以上ここにいると自分が何をするか分からない。体調が悪いんだから、甘えたくなるのも当然だ。光くんは辛いんだ。警鐘が鳴る頭に再度言い聞かせた。
「あの、俺…明日朝早いの思い出したから…も…帰んないと…」
「…え…かえるのぉ…?」
「う、うん…ごめんね」
「あ…ゆーと…」
薬飲んでゆっくり休んでね。
そう言って逃げるようにして出てきた俺は、そのままの勢いでエレベーターの前までやってきた。去り際に名前を呼ばれたけれど気づかぬフリをして、かすり見た光くんは心細そうな目を向けていた。
そこで一応メッセージを入れておこうと、スマホを探して触ったジーンズのポケットに違和感を感じた。それは入れっぱなしだった光くんの部屋の鍵で、俺は置いてくるのを忘れてしまったようだ。
そしてふと気づく。何も食べていない状態で薬なんて飲めないし、もし熱が長引けば、この状況が誰かに回ってくるんじゃないかと思った。そう思うと嫌で、そしてなにより、あんなに甘えた光くんを誰にも見せたくないという気持ちが強かった。光くんには早く良くなってもらって、いつもの明るくて面白い姿を見せてもらわないと。
そう思って、自分の気が持つか不安ではあったけれど、足早に踵を返した。
本当に、お願いだから早く元気になって。
そんな可愛い姿は誰にも見せないで。
それでも
俺が光くんにもらったこの病は、恐らく一生治らないと思った。
ーFinー
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アキラ(プロフ) - しろくまさん» わっ、しろくまさん早速コメありがとうございます!私の頭の中はゆとひかでいっぱいです(笑)ビジュアル無敵のゆと最高ですー☆にゃんの名前呼びはガチで聞きたい勢です(笑)更新頑張りますね! (2018年7月1日 19時) (レス) id: f169dfc484 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - やって来ました。楽しませていただいています。ゆとひか…いつなんどきもイケメンのゆと君と何しても可愛いひかにゃん。ビジュ最高〜!ひゅーひゅー★ゆとくん呼びは逮捕案件〜萌えすぎる〜!更新、楽しみにしてますね。 (2018年7月1日 11時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
アキラ(プロフ) - こんぺいとうさん» 初めまして!ゆとひか、アリ岡ですか?とても嬉しいです!これからもキュンキュンしてもらえるように頑張りますね(^-^)コメントありがとうございました。 (2018年4月12日 21時) (レス) id: f169dfc484 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - 初めまして!!読ませて頂きました!ゆとひか……アリ岡ですね。光くん、可愛くて読んでるこっちがきゅんとします。これからも頑張ってくださいね! (2018年4月12日 1時) (レス) id: aef38d8764 (このIDを非表示/違反報告)
アキラ(プロフ) - ねね子さん» ねね子さん、こちらへもコメントありがとうございます!一緒にゆとひかを語れるお仲間さんがいるの、とても嬉しいし心強いです!またゆとひか語りましょうね!まだまだ占ツク慣れないですが、ぼちぼち更新していこうと思ってますので、温かく見守ってください(^ω^) (2018年4月11日 7時) (レス) id: f169dfc484 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アキラ | 作成日時:2018年4月9日 3時