yt×hk短編集

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手を組んでいつものように眠っているように見えるものの、閉じた瞼の上にある眉が寄って、少しばかり溝ができてしまってるから頭も痛いのかもしれない。頬も紅潮している気がする。辛そうだなと思いながら無言で見下ろしていると、頭上へ急に影ができたことに気がついたのか、光くんがうっすらと目を開く。


｢…ゆーと？｣


　意識がぼやけながらも誰か判別できたみたいで、俺だと分かった光くんは口元だけで少し笑ってみせた。上からだと話しづらいので、膝を着いて目線の高さを合わせる。するとそれに合わせて光くんがころんと首を傾げこちらに顔を向けた。


かわいい…。

　こんな時でもそう思ってしまう自分に心の中で苦笑い。ゆっくり瞬きを繰り返す光くんに、俺は優しく声を掛けた。


｢おはよう、大丈夫？｣
｢んー……うん…｣
｢…大丈夫じゃないでしょ、眉間に皺寄せて｣
｢寄せてないよぉ…｣


　そう言いながら一瞬目を閉じて、眉を上げおどけてみせる光くん。再度開いた目はやはり熱に浮かされたそれで、水分量の増した力の入らない眼差しでいつも以上にとろんと話す様子から、相当熱がある事が窺える。この調子で撮影に参加するつもりなのか。多分、立っているのもやっとだと思うんだけど。


｢熱あるんでしょ？薬飲んだ？｣
｢うん…飲んだぁ…｣


　間延びしたその声に、少し笑いそうになってしまう。何か楽に撮影をこなす方法はないかと考えていると、コンコンと小気味よい音が2回聞こえ、スタイリストさんらしき人が楽屋のドアを開けた。もうすぐ撮影が始まるみたいで、衣装に着替えてくださいと伝えに来たようだった。ドアの閉まる音が聞こえたと同時にぞろぞろと立ち上がり、みんなが別室へ移動する準備を始めた。

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