その8 ページ8
『おかえりなさい』
一階で待ってたAちゃんは一瞬、顔を拭う仕草をした。
伊「ただいまぁ」
『どうでした』
九「司法解剖の結果と照らし合わせてみました。陥没骨折はなく脳挫傷は見られない。頭蓋骨には放射線状の亀裂のみ。つまり屋上の高所からの転落ではなく、低い場所からの転落死」
伊「ここで足を滑らせたのかぁ」
陣「手すりから落下時の指紋も取れた」
『…こんな高さからでも、死ぬんですね』
陣「現場に矛盾はない。間違いなく事故」
『事故…』
Aちゃんは、酷く傷ついた顔をしていた。
陣「酔ってなかったり、打ちどころが悪くなきゃ…助かってたかもな」
その後、陣馬さんと九重は解散。
Aちゃんが屋上に向かったから、俺もついて行くと階段に腰かけた。
伊「わっかんないなぁ」
『…何がですか』
伊「志摩は、最後に香坂に会ったのはいつだろう」
『…』
伊「生きてる香坂に、」
『聞けばいいじゃないですか。いつもみたいに無神経に』
伊「…そうだね」
そう言われ、志摩に電話するとスピーカーにした。
志《なんだ》
伊「事故だった。手紙も読んだ」
志《…本当に調べたのか》
伊「当たり前よ〜。俺は有言実行。諦めも悪い。…でも、ひとつだけわからない。…最後に、生きてる香坂に会ったのはいつ?志摩はなんて声掛けた?」
志《…降参か?》
伊「こーーさんっ!教えて」
志《…最後は、あいつが肩を落としてあの手紙を書いていた時。それから、あのビルの屋上。》
伊「…あの夜、屋上行ったの?」
志《……行かなかった。俺は、どっちも行かなかった。チャンスはあった…何度も。だけど声をかけなかった。
いつの間にか帰ったあいつが、メールしてきて、「家の屋上で飲みませんか?志摩さんの好きな酒、買って待ってます」って…こっちは始末書書いてんのにふざけんなっ!、て…無視した。》
Aちゃんを見ると、静かに涙を流していた。
志《あれから何度も…何度も、何度も何度も何度もっ!頭の中で繰り返す…
あの時声をかけてれば、あの時屋上に行ってたら、もっと前にあいつの異変に気づいていたら!スイッチはいくらでもあった。だけど現実の俺は、それを全部見過ごした。
…俺があいつに、最後にかけた言葉は…「進退は自分で決めろ」。
翌朝、連絡がつかなくて家に行ったら…死んだあいつがいて、傍に泣きじゃくるAの姿…。
事故?俺はそうは思わない。悔いても悔いても、時間は戻らない》
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ミヤ(プロフ) - 質問していいですか? (2020年12月19日 22時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - こんばんは(*^^*) 夜遅くにすみません...。 ドラマ『MIU 404』終わってしまいましたね。。。 (2020年9月5日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - こんばんは(*^^*) 更新ありがとうございます。 物語読みました。 続きが気になります。 更新待ってますね。 (2020年8月31日 21時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 続けてのコメントですみません(>_<) 物語読んでいて気が付いたのですが...。 【残り話数を使って小話し】無防備のここの部分 相当疲れているのが、起きる気配がない。 心地いいのか、口角が僅かに上がった。 これ正しくは相当疲れているのか、ではないんでしょうか? (2020年8月30日 0時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - こんばんは(*^^*) はじめまして。 夜遅くにいきなりすみません...。 読んでいて気が付いたのですが...。 ご報告のここの部分 とにかく来週か楽しみです。 これ正しくはとにかく来週がではないんでしょうか? (2020年8月30日 0時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まとい | 作成日時:2020年8月1日 5時