08.交渉 ページ8
*
2日間、剛くんの部屋に閉じ込められた。
ご飯は運んでくれた。
だけど、食べる気にはなれなかった。
剛「Aちゃん？また食べてないの」
『…』
剛「…嫌いなものあった？ごめんね」
『…』
優しく抱きしめてくれる。
でもそれが嫌だった。
剛「Aちゃん」
『……して、』
剛「ん？」
『かえして』
剛「…」
『何も、言わないから…源ちゃんに言わないから、家に帰らせて』
剛「…」
『…』
剛「…いいよ」
『…ぇ』
正直、拒否されるかと思ってた。
剛くんを見るといつもの笑顔。
剛「いいよ。源ちゃんも心配してるだろうしね」
『…』
剛「でも…、約束して？」
『やくそく…？』
剛「そ。…俺からの連絡には5分以内に返事して。呼び出したら必ず来て。いい？」
『…』
剛「できなかったら、写真…バラ撒くよ」
拒否権はなかった。
剛くんに送ってもらって帰宅した。
『…ただい、ま』
帰ると、家には誰も居なかった。仕事だろうか…。
玄関で立ち尽くしているとガチャッとドアが開いた。
源「わっ…A」
『源、ちゃん…』
グッと引き寄せられると、抱きしめられた。
源「何してたんだよっ、心配したんだよ？」
『…ごめん』
源「友達の家に泊まるとは聞いてたけど、一泊だろ？昨日帰って来なくて連絡しても返事なくて、心配したんだぞ」
『…源ちゃん、、』
安心から、罪悪感から、涙が溢れた。
『…ごめんなさい、スマホ、充電切れて…』
源「もういいよ、何もないなら。ずっと友達の家居たんだろ？」
『うん…』
言いたかった。
でも弱みを握られてる以上言えるはずがない…。
第一、どう言えばいいんだ。
*
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作者名：まとい
| 作成日時：2020年12月15日 2時
