12.終焉 ページ12
*
チャイムを鳴らして出てきた人物を睨む。
剛「あれー。Aちゃん」
ヘラッと笑って中に戻っていくのを追いかけた。
『どうしてくれんの』
剛「えー、なにが?」
『とぼけないでよ!雑誌、見たでしょ』
剛「あー、あれね。傑作でしょ」
『…は?』
剛「俺が売り込んだんだ」
『…なんで、、自分だって立場があるのに』
剛「んー…なんか、面白くなりそうだから」
向けられた笑顔はいつもテレビで見ているみんなが好きな笑顔。
私も好きだった。なのに今は…憎い。
『ふざけんなっ…』
剛「なぁにそんなに怒ってんのー?」
『源ちゃんが出ていった…婚約もなくなった…!あんたのせいでっ!』
そういうが、彼は悪びれもない顔を向けた。
剛「…ふーん。そう」
『…』
剛「良かったじゃん」
『よかっ、、た…?』
剛「これで気にせずに俺と居られるね」
『…』
剛「っ…」
ギュッと抱き寄せてきた彼を突き飛ばす。
『…いやだ。あんたとなんか、絶対』
剛「傷つくなぁ」
そっと鞄に手を入れ忍ばれていたナイフを取り出し、彼に向けた。
剛「…」
『もうやだ…』
剛「マジなの?」
『もう、終わりにしたい…』
泣きながら足を踏み込むと、勢いよく彼に向かった。
剛くんは避けもせず、刺されると同時にまた抱きしめた。
『…』
剛「っ…、A」
『…』
剛「本当に、好きだったよ。愛してた」
『…』
剛「源ちゃんより先に、、出会ってたら…」
『…』
ドサッと足元に倒れた剛くん。
よろめきながら数歩さがると、倒れる彼を見つめた。
血を流してピクリとも動かない彼。
『…ころし、ちゃ…った…』
血のついたナイフが手から滑り落ち、床にカンッと落ちた。
直後、開いていた窓からフワッと風が吹き込みカーテンが揺れた。
『…』
引かれるようにベランダに足を進めた。
ここは12階。
そのまま柵に手をかけると、身を乗り出した。
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作者名:まとい | 作成日時:2020年12月15日 2時