05.仮説 ページ6
◆伊吹side
1週間、彼女のもとへ足しげく通った。
俺が少し体を動かす度に肩をはね上げ防御の体制になる。
「すみません。ちょっとお話よろしいですか?」
志「はい」
ある日の任務中、志摩と彼女のとこへ行くと担当に呼ばれた。
「彼女が一向に話そうとしないので、ある仮説を立てて様々なテストを行ってみたんです」
伊「テスト?」
「はい、簡単なものです。最初に小学5年生の漢字や計算問題を行ってみました」
志「小5ですか」
「彼女、全く解けませんでした。さらに難易度を下げて小3、小1とやってみたんですが…どれも解けませんでした」
志「解けないって、解こうとしなかったってことですか?」
「いえ。解こうという姿勢は見られました。ペンも持ちましたし、ただ…ペンもちゃんと持てないみたいで」
伊「ん?」
「こう…グーで握るように、赤ちゃんがものを握る時のような感じで、持ち直させてもしっかりと維持できてないんです」
伊「でも、見た感じ高校生くらいですよね?」
「はい。まさかと思い、ひらがなを書かせてみようとしましたが、どれも書けませんでした。それから、線と円を書いてもらいました。」
医者が見せてきた紙には、ガタガタと歪な横や縦の線と丸。
「普通なら、年少くらいには練習するので、もっとマシにかけるはずなんです」
志「確かに…」
「最後に、ものや動物のイラストを当てるゲームをしてみました。犬はどれかと聞いても、認識していないみたいで」
志「…それで、みなさんが立てた仮説とは」
「はい。我々の立てた仮説は、おそらく…彼女は生まれてから一度も外に出ていない。そして読み書きなどの教育も受けてこなかったんじゃないかと…」
志「話さなかったんじゃなく、話せなかった……でも、その場合でも、国が把握していれば調査が入るんじゃ」
「把握されていないとしたら…? 存在自体、してなかったとしたら」
志「!……無戸籍」
「おそらく…」
難しい顔で対話する医者と志摩が話を終え、任務に戻る。
伊「無戸籍ってどーゆこと?」
志「生まれた時、出生届を出さなかった故に戸籍がない。戸籍がないってことは、あの子は存在していないことと同じだ」
伊「…」
志「最悪、殺されても誰も気づかない」
伊「!」
志「外に出てなかったのなら尚更。例え遺体が見つかっても、本人の身元が分からない以上犯人にもたどり着くことが難しいからな」
伊「…じゃぁ、親?探せねーの?」
志「考えはある」
*
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ハノン(プロフ) - 完結おめでとうございます‼︎ (4月16日 8時) (レス) @page50 id: 1f618da4ab (このIDを非表示/違反報告)
ハノン(プロフ) - はわ、、、結婚ですか💍はわわ、、、お返事はどうなるんでしょう😇楽しみにしています。 (4月12日 16時) (レス) @page47 id: 1f618da4ab (このIDを非表示/違反報告)
karen11061999(プロフ) - 最高です。更新待ってます! (11月19日 20時) (レス) @page35 id: b38f00e9bf (このIDを非表示/違反報告)
課長封月X(プロフ) - お礼の仕方、、、。切なくて苦しいです、、。お話大好きです!更新楽しみにしてます! (10月18日 0時) (レス) @page27 id: 160d503e2f (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみん(プロフ) - 最高すぎてお気に入り登録させてもらいました!!更新楽しみにしてます☺︎ (8月10日 3時) (レス) @page12 id: 96f35707a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さめ | 作成日時:2023年8月3日 14時