9話 ページ10
……実はこのエウリュディケ荘園の地下には、音楽室が存在している。
しかし音楽室で奏でる音は不思議な力によって外に漏れない、
入るには荘園の主の許可がいるため、辿り着く人は私以外誰もいないのだ。
そもそも存在すら知らない人がほとんどだろう。
この荘園に「音楽家」として招待された私は、
結構な頻度でこの誰も知らない、辿り着けない音楽室で
こっそりと大好きなピアノとフルートを奏でていた。
音楽家と名乗ってはいるが、正直私は自分の演奏を人に聞かれるのが嫌いだ。
フルートは試合で周りを助ける手段だから仕方ないけれど、ピアノは……。
だから私は音楽室の存在すら誰にも言っていない。
私以外ここに来ることは絶対に有り得ないのだ。
誰もいない音楽室で今日も独りピアノを弾き、
音符や記号が散りばめられた難解な楽譜を仕上げていた時のことだった。
ーーコンコンコン。
誰も知らないはずの、辿り着けないはずの音楽室に
ノックの音が響いたのは。
「……っ！」
あまりに突然の出来事にピアノを弾いていた手が止まって
全身が凍りついていき、心臓は早鐘のように鼓動を打ち始める。
……一体誰がここに辿り着けたのだろうか。
「……どうぞ」
素直に返事をするか無視をするか。
本当は無視したかったけれど、相手が荘園の主の可能性があると
考えた私は絞り出すような声でしぶしぶ返事をした。
「……失礼するよ」
開かれたドアの先にいたのはルカだった。
「ルカ……」
ノックした相手がルカだったことに、一気に肩の力が抜け
張り詰めていた空気が和らいでいく。
ルカは私が荘園の中で１番信頼を置いている相手だし、
私から頼めばここの存在を誰かに言いふらすことはしないだろう。
……本当に、ここに来たのがルカでよかった。
「どうしてここが分かったの……？」
ルカは音楽室の扉を閉めると、この部屋に備え付けられている
古めかしいソファに腰掛けながら私の問いに答えた。
「どこを探しても誰に聞いても、君が見つからなくてな……。
荘園の主に君がどこにいるか知らないかと尋ねたら、
この音楽室に案内されたんだ」
「そうなんだ……。
ごめんね、何か急ぎの用事でもあった？」
「いや？君があんまりにも見つからないから、
迷子になったか攫われでもしたのか心配になってな」
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たまごさん(プロフ) - れみこさん» えっご存知でらした…?嬉しいです…。ビクターくんのほうもご覧になってくださっていて本当にありがとうございます…。れみこさんのビクターくんも見てきました、世界観がとても好きです。素晴らしい作品をありがとうございます。 (2020年7月21日 17時) (
レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - たまごさんさん» たまごさんだ！！ありがとうございます！！私、たまごさんの書くルカ君好きです！可愛い！あとビクター君の遺書の作品は泣きました……。ありがとうございます！更新出来るときはガンガンしていきます！ (2020年7月19日 23時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - このルカくんも良きですね…。私もアラサー設定好きですよ。これからビクターくんのほうも見てこようと思います、応援してます。 (2020年7月19日 15時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 沙羅さん» コメントありがとうございます！！うおおそう言っていただけると嬉しいです…！！更新頑張っていきますね！！ (2020年7月19日 12時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ルカくんのお話増やしてくださってありがとうございます…！お兄ちゃんなルカくん、大人な格好いいルカくん…！好き過ぎてニヤニヤとトキメキが止まりません…(( 更新、楽しみにしております…！ (2020年7月19日 0時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年5月28日 3時
