36話 ページ37
「……約束だぞ」
こくり、とルカの言葉に力強く頷いた。すると痛いくらいに握られていた手が解放される。
自由になった手に残るのはわずかなぬくもり。ルカの手が確かに此処にあった証。
だけどそれは冷たい空気と混和して、瞬く間に消えていく。
ーーまだ、その温度を感じていたい。
「あのね、ルカに言いたいことがあったの」
去っていくルカの手を掴み、引き留める。
「……何だ？」
いつもの穏やかな表情で、ルカは小首をかしげる。
私は今、貴方に恋をしている。試合が終わったらそう言うと決めていた。
早く伝えたい。せっかく目の前にルカがいるのだから。
私ならできる、大丈夫。緊張しちゃだめ。
はやる気持ち。だけど身体はそれを口にするのを許してくれなくて。
波打つ心臓。詰まる息。閉まる喉。
言いたいことはすぐそこまで出かかっているのに、あと一歩の勇気が足りない。
ひゅ、と息を吸う。口を小さく開いては閉じ、開いては閉じての繰り返し。
ルカから見た私はまるで酸素を求める魚のようだろう。
ぎゅ、と口を結ぶ。布団を握りしめ、そして腹をくくる。
伏せていた目を大きく張ってルカの目を見据えた。
２人の視線が交わった瞬間、自然と言葉がこぼれ落ちていた。
「小さい頃からずっと、ルカお兄ちゃんに憧れてた」
優しく絡み合う視線。ルカは私から目を逸らさない。
私もルカの目を見つめて離さない。離したくなかった。
「でも今はね……私は貴方のことが好き。
ルカに、恋をしてるの」
その言葉にルカは小さく息を呑んだ。
やっと言えた言葉。それを聞いたルカは今何を考えているのだろう。
「私は、きっとどんなルカでも好き。
……大好き、だよ」
ここまで言ってやっと視線を落とす。
全身の血液がめぐりめぐって頰に集中していくのを感じる。
のぼせてしまいそうなくらい熱い。このままだといずれ沸騰してしまいそう。
ルカは何も言わない。だけど私もルカの顔を見ることができない。
ちゃんと伝わったかな。前みたいに君の好きは恋じゃないって言われたらどうしよう？
いや、それなら伝わるまで何度でも言えばいい。
ひとり色々考えているとルカの声が聞こえた。
「……ありがとう」
囁くような小さな声に恐る恐る顔を上げる。
「うん……」
両目が捉えた景色に思いがけず胸が高鳴った。
ルカの顔は今まで見たことないくらい赤く、赤く染まっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 91人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまごさん(プロフ) - れみこさん» えっご存知でらした…?嬉しいです…。ビクターくんのほうもご覧になってくださっていて本当にありがとうございます…。れみこさんのビクターくんも見てきました、世界観がとても好きです。素晴らしい作品をありがとうございます。 (2020年7月21日 17時) (
レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - たまごさんさん» たまごさんだ！！ありがとうございます！！私、たまごさんの書くルカ君好きです！可愛い！あとビクター君の遺書の作品は泣きました……。ありがとうございます！更新出来るときはガンガンしていきます！ (2020年7月19日 23時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - このルカくんも良きですね…。私もアラサー設定好きですよ。これからビクターくんのほうも見てこようと思います、応援してます。 (2020年7月19日 15時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 沙羅さん» コメントありがとうございます！！うおおそう言っていただけると嬉しいです…！！更新頑張っていきますね！！ (2020年7月19日 12時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ルカくんのお話増やしてくださってありがとうございます…！お兄ちゃんなルカくん、大人な格好いいルカくん…！好き過ぎてニヤニヤとトキメキが止まりません…(( 更新、楽しみにしております…！ (2020年7月19日 0時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：れみこ | 作成日時：2020年5月28日 3時
