19話 ページ20
ーーざあざあと降り注ぐ雨が私たちの体に染み込んでいく。
冷たい雨粒は私たちの体も、心さえも冷やしてしまいそうだった。
「私は貴方がいま何を考えて、
何に苦しんでいるのか知りたいよ……!
我慢しないで、全部言って欲しい」
ルカの腕から手を離す。
そしてどうか彼の心に届くように。
そんな祈りを込めながら気持ちを紡いでいく。
「……全てを打ち明けたとして、
それを君が受け止められるとは思わんな」
ルカ表情は苦しそうなまま。
何の感情も見えない、無機質な声で言った。
「受け止められるよ!
だって私はルカのこと」
ーー好きだから。
その言葉は発されることなく、ルカの嘲るような笑いに消されてしまった。
「違うな。
君は私を見てすらいない。
本当はあの頃の私が好きなだけだろう!?」
「……っ!」
ルカが言い放ったこの言葉は核心を突き、容赦無く私の胸を抉る。
ルカがそれに気づいていることは解っていたはずなのに。
でもいざ本人の口から言われるとなると、こんなにも堪えるものなのか。
「……そうかもしれない。
でも、私はちゃんとルカのこと好きになりたい……!
だから……」
ルカにそんなことを言わせてしまったことに胸が痛くて、悲しくて、悔しくて。
気を抜いたら今にも涙が溢れそうだった。
だけど、きっといま私は泣いちゃいけない。
「もうやめてくれ……!
本当に好きかどうかはさておき、
君が健気に私を慕う姿を見てると、苦しいんだ」
ルカはまたしても私の言葉を遮って叫ぶ。
頭を抱え、目を固く閉じ、全身で私を拒絶している。
「……ルカ」
……どうしてだろう。
拒絶されているはずなのに、やめてと言われしまったのに。
私はルカに手を伸ばさずにはいられなかった。
「私、貴方が思ってるより子どもじゃないよ。
だから、大丈夫」
ゆっくりと腕を伸ばし、頭を抱えるルカの両手首をそっと握った。
正直、ルカに何を言ったらいいのか分からなかった。
けどルカは私を子どもだと、庇護の対象だとみなしている。
大人であるルカは私を傷つけることに罪悪感を感じている。
それくらいしか分からない。
でも、私は自分が傷つくことなんかより、ルカがひとりで傷つくことの方がよっぽど嫌だーー。
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たまごさん(プロフ) - れみこさん» えっご存知でらした…?嬉しいです…。ビクターくんのほうもご覧になってくださっていて本当にありがとうございます…。れみこさんのビクターくんも見てきました、世界観がとても好きです。素晴らしい作品をありがとうございます。 (2020年7月21日 17時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - たまごさんさん» たまごさんだ!!ありがとうございます!!私、たまごさんの書くルカ君好きです!可愛い!あとビクター君の遺書の作品は泣きました……。ありがとうございます!更新出来るときはガンガンしていきます! (2020年7月19日 23時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - このルカくんも良きですね…。私もアラサー設定好きですよ。これからビクターくんのほうも見てこようと思います、応援してます。 (2020年7月19日 15時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 沙羅さん» コメントありがとうございます!!うおおそう言っていただけると嬉しいです…!!更新頑張っていきますね!! (2020年7月19日 12時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ルカくんのお話増やしてくださってありがとうございます…!お兄ちゃんなルカくん、大人な格好いいルカくん…!好き過ぎてニヤニヤとトキメキが止まりません…(( 更新、楽しみにしております…! (2020年7月19日 0時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れみこ | 作成日時:2020年5月28日 3時