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68話 ページ24

ビクターに連れてこられたのは、家から遠く離れた郊外のとある共同墓地。


どこか安らかさを感じる不思議な空間へ足を踏み入れては、ふたり進んでいく。

見渡す限りの同じ形をした無数の墓石。


でもそこに刻まれている名前はひとつひとつ違うもので。


 「……ここです」


とあるお墓の前で、ビクターが立ち止まった。

恐る恐るそれに目を向けると、其処には確かに彼の名前が刻まれていてーー。


 「……本当に、もういないの……?」


ーーこんな形で、ルカと会いたくなんてなかった。


確かに私はルカに会いたいと、ずっと心の片隅で望んでいた。

だけどそれは人の形をした、生きているルカと会いたいという話であって。


ルカはもうこの世にいない。


目の前で静かに佇む墓石が、容赦無く私にその事実を突きつける。

その場に座り込んで、ルカの名を刻んでいる石にそっと触れてみた。


冷たい。


手に触れたそれは驚くほどひんやりとしていて、

私の体温、流れる血すら吸い取ってしまうような気がした。


 「……っ、うぅ……」


ーールカは、もうこの世にはいない。


今になってようやく受け止めることのできた事実。

堰を切ったようにこぼれだす涙。


大好きな人の死に、私はようやく涙を流すことができたのだった。


悲しい、辛い、痛い。全身が引き裂かれてしまうような感覚。

息を吸おうとしても上手く吸えない。


ルカのいない世界で、私はどうやって生きていけばいいのだろうーー。


 「Aさん……!」


ビクターが私の背中をさすってくれる。

背中に感じる温かい手に、余計に涙が溢れて止まらない。


 「わ、たし……これから、どう、生きて……」


途切れ途切れの言葉。


 「生きたく、ない……ルカ、とおなじ……ところに……」


いきたい。そう言いかけた瞬間、頭上から誰かの声が聞こえた。


 「ーーダメだ」


顔を上げ、涙でぼやけた視界でその声の主を確認する。


 「アンドルーさん……」


 「Aを、ルカと同じところへ行かせるわけにはいかない」


久しぶりに見たアンドルーも、ビクターと同じくあの頃とまるで変わっていなくて。


 「な、んで……!アンドルーには、関係ない……!」


涙の溢れる目で、彼のことを睨みつけてしまった。

アンドルーはあの頃よりも感情のこもった表情で私を見下ろし、口を開いた。

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セルナ(プロフ) - 久々に占ツクでガチ泣きしました。こんなステキな作品をありがとうございまし。また、書く機会があれば応援しています! (2021年2月22日 1時) (レス) id: 9cc0fe1068 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 野生の王者さん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません……!なんと嬉しいお言葉……!!この作品だけでなく他の作品も読んでくださってありがとうございます!!! (2020年9月3日 0時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
野生の王者(プロフ) - 完結おめでとうございます!陰ながらずっと応援させていただきました。どの作品も面白く、涙ながらに読ませていただきました。まるで当事者のように胸が苦しくなり、切なくワクワクしました!素敵な物語をありがとうございました!これからも応援しています! (2020年8月30日 12時) (レス) id: 3c825fe033 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 沙羅さん» ここまで読んでくださって本当にありがとうございます……!!とても嬉しいお言葉……!!心情描写は頑張りました!!笑 こんな結末で申し訳ないです……。救済できるよう頑張りますね……! (2020年8月28日 2時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 完結おめでとうございますと、お疲れ様です…!久々に文字を読んで涙した気がします…深い…。。れみこさんの書くお話はキャラクターの心情とかの描写が細かくてほんと尊敬します…(心がきゅぅってなりました…)ぜ、是非とも皆に救済を…! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れみこ | 作成日時:2020年8月8日 17時

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