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「…なんで、知って……」
「なんでも1人で何とかしようとして…
僕が気付かないわけない。」
彼の腕の中は泣きたくなるくらい暖かくて、優しかった。
「……信じたくなかった、自分がおかしくなり始めてること。
でも、本当に酷い話で、だんだん分からなくなるの。
いつも使ってる道が分からなくなって。
料理の作り方も味も、分からなくて。
本の描き方さえも、分からない。
今の日付と時間が分からなくて、
物を失くして、誰かに盗られたって妄想する。
その不安から人に当たって、誰かを傷つける。
おかしいよね、私の頭の中の消しゴムは誰かを傷付けちゃうの。
消しゴムは、悪いことも全部キレイにしてくれるものなのにね。」
どうして、こんな病気なんかになったのかな。
誰かを傷付けてしまうような病気。
「…1番傷付いてるのは、Aだよ」
「…私、いつか忘れるんだよ、
ジンのこと。
このホテルで会ったことも。
ジンの声も、笑顔も、癖も。
忘れたくないのに、分からなくなるんだよ…っ、」
日付が分からなくなってもいい。
文字が書けなくなってもいい。
けれどジンだけは、
ジンとの思い出だけは、失くしたない。
「…私がジンを忘れていくみたいに。
…ジンも私のことを忘れて、
幸せになって欲しいの。」
私がこんな病気じゃなかったら、苦しい思いをさせずに済んだ。
彼は、私を抱きしめたまま口を開いた。
「…"ドナウ川の伝説"。」
彼はふと、そう呟いた。
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彩心(プロフ) - るいさん» こんばんは。返信遅れてしまいすみません…大大スランプに陥ってしばらく小説から離れていました。そう言って頂けると本当に元気が出ます笑 頑張って続き書きますね(^-^) コメントありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです(T_T) (2021年5月11日 1時) (レス) id: 96b719c4dd (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - お話の雰囲気とても好きです!続きが気になります…! (2021年4月14日 9時) (レス) id: d5dce8822e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩心 | 作成日時:2021年3月23日 20時