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「…わぁ…すっごい…」
その光景を見て私は思わず感嘆の声を漏らした。
週末になってソクジンさんが設計した図書館に足を運んだ。
まだ正式にオープンはしていないみたいだけど、特別に入らせてくれた。
内観は今まで見たことも無い図書館だった。
ずっと天井まで本が並んでる。
木のような匂いのする薄暗い図書館ではなく、壁一面は全てガラス張りだ。
そこから見えるのはきれいな海だった。
真ん中には白くて大きな球体のオブジェがあり、暗くなると発光するらしい。
まるで暗闇を歩く月のようだった。
「イメージと違った?」
ソクジンさんは気分が上がって歩き回る私に向かってそう言った。
「予想を超えた、の方が正しいかも…?」
そう言うとソクジンは満足そうに笑ってよかった、と言った。
「好きに見ていいよ。」
そう言われ本棚を見て回る。
本当に、壁全部に本がびっしり。
多分何年かかってもここにある本全部は読み切れない。
広すぎる空間には私たち二人だけだった。
だから解放的な気分になって思わずはしゃぎそうになる。
「…あ、」
ふと目に止まった本を手に取った。
手に取った本の表紙には暗い夜空に光る銀河。
それに向かう、列車が描かれていた。
「"銀河鉄道の夜"」
気付いたらソクジンさんが後ろに立っていて、私が手に取った本を覗き込んでいた。
「この本は私が絵本作家になろうと思ったきっかけです」
「僕も好きだよ。この話。特にジョバンニの台詞とか」
「…?どこですか?」
「"どこまでもどこまでも一緒に行こう。
僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば
僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。"」
ジョバンニが友人のカムパネルラに向かって言った言葉だ。
ソクジンさんは、その一節を読み上げると私の肩を持って振り返らせる。
ソクジンさんと目が合わさって本を閉じた。
「…A」
「…?」
彼は1度、長い瞬きをしてまた私をその瞳で射止めた。
「…結婚、しよう」
私は、この日をまた想い出すと思う。
終わる日まで寄り添うように
あなたを憶えていたい。
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彩心(プロフ) - るいさん» こんばんは。返信遅れてしまいすみません…大大スランプに陥ってしばらく小説から離れていました。そう言って頂けると本当に元気が出ます笑 頑張って続き書きますね(^-^) コメントありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです(T_T) (2021年5月11日 1時) (レス) id: 96b719c4dd (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - お話の雰囲気とても好きです!続きが気になります…! (2021年4月14日 9時) (レス) id: d5dce8822e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩心 | 作成日時:2021年3月23日 20時