検索窓
今日:21 hit、昨日:1 hit、合計:50,361 hit

61 ページ14

.


「…わぁ…すっごい…」


その光景を見て私は思わず感嘆の声を漏らした。


週末になってソクジンさんが設計した図書館に足を運んだ。

まだ正式にオープンはしていないみたいだけど、特別に入らせてくれた。


内観は今まで見たことも無い図書館だった。

ずっと天井まで本が並んでる。

木のような匂いのする薄暗い図書館ではなく、壁一面は全てガラス張りだ。

そこから見えるのはきれいな海だった。


真ん中には白くて大きな球体のオブジェがあり、暗くなると発光するらしい。

まるで暗闇を歩く月のようだった。




「イメージと違った?」


ソクジンさんは気分が上がって歩き回る私に向かってそう言った。


「予想を超えた、の方が正しいかも…?」


そう言うとソクジンは満足そうに笑ってよかった、と言った。


「好きに見ていいよ。」


そう言われ本棚を見て回る。


本当に、壁全部に本がびっしり。

多分何年かかってもここにある本全部は読み切れない。


広すぎる空間には私たち二人だけだった。

だから解放的な気分になって思わずはしゃぎそうになる。



「…あ、」


ふと目に止まった本を手に取った。



手に取った本の表紙には暗い夜空に光る銀河。

それに向かう、列車が描かれていた。




「"銀河鉄道の夜"」


気付いたらソクジンさんが後ろに立っていて、私が手に取った本を覗き込んでいた。




「この本は私が絵本作家になろうと思ったきっかけです」



「僕も好きだよ。この話。特にジョバンニの台詞とか」


「…?どこですか?」




「"どこまでもどこまでも一緒に行こう。
僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば
僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。"」



ジョバンニが友人のカムパネルラに向かって言った言葉だ。



ソクジンさんは、その一節を読み上げると私の肩を持って振り返らせる。


ソクジンさんと目が合わさって本を閉じた。



「…A」






「…?」






彼は1度、長い瞬きをしてまた私をその瞳で射止めた。







「…結婚、しよう」





私は、この日をまた想い出すと思う。



終わる日まで寄り添うように


あなたを憶えていたい。



.

62→←60



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (50 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
268人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

彩心(プロフ) - るいさん» こんばんは。返信遅れてしまいすみません…大大スランプに陥ってしばらく小説から離れていました。そう言って頂けると本当に元気が出ます笑 頑張って続き書きますね(^-^) コメントありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです(T_T) (2021年5月11日 1時) (レス) id: 96b719c4dd (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - お話の雰囲気とても好きです!続きが気になります…! (2021年4月14日 9時) (レス) id: d5dce8822e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:彩心 | 作成日時:2021年3月23日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。