【悪魔執事と黒い猫】月の愛し子は悪魔執事を救う4 (ページ26)

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第10話【貝殻の髪飾り】ページ26

尾行してみると、ハウレスは森の奥の方へと向かっている。

ﾊｳﾚｽ「……」

ﾑｰ「ハウレスさん、どこまで向かうんでしょうか？街から出てしまいましたが…。」
ﾍﾞﾘｱﾝ「主様、結構な距離を歩かれていますが、大丈夫ですか？」
「大丈夫だよ。」
ﾍﾞﾘｱﾝ「お疲れのときはおっしゃってくださいね。すぐに馬車を呼びますので。」
「ありがとう。」

ﾑｰ「はぁ…はぁ…ぼ、僕は疲れてきちゃいました。」
ﾍﾞﾘｱﾝ「ムーちゃんはご自分の足で頑張ってください。」
ﾑｰ「そ、そんな…！」
ﾉｰｳﾞｧ「ほらよ、手が空いたから運んでやるよ！」
ﾑｰ「ありがとうございます、ノーヴァさん！」

…ノーヴァ、いつからあんな猫好きになったのかな…どちらかといえば嫌いだったはずなのに。

＊＊＊

ハウレスはどんどん歩いていき、森を抜けた丘の上まで来てしまった。

ﾑｰ「ここは風が気持ちいいですね。見てください、ここから感謝祭の会場が一望できますよ！」
「……。」

あまりの美しさに言葉を失っていた。
やはり自然が生み出す“美”というのは人工よりも美しい。

ﾍﾞﾘｱﾝ「それにしても今日は天気も良く、いいお祭り日和ですね。」
ﾉｰｳﾞｧ「確かにそうだね〜。」

ﾍﾞﾘｱﾝ「……ここからの景色を眺めていると…この世界が天使により危機に瀕していることなんて、忘れてしまいます。あの山脈も、美しい森も…昔から何も変わりません…。」
ﾑｰ「ベリアンさん？」

ﾍﾞﾘｱﾝ「おっと、申し訳ありません。主様の前だというのに喋りすぎてしまいました。」
「大丈夫だよ。もっと話してほしいくらい。」
ﾑｰ「ベリアンさんにも、いろんな思い出があるんですね。」
ﾍﾞﾘｱﾝ「もう随分昔のことで、ほとんど忘れてしまいましたけどね…。」

昔…か。
私の昔は、辛いことが沢山あったけど、細やかな幸せもあったな…全て壊れてしまったけれど。

ﾑｰ「それにしてもハウレスさん、一体どこまで行くんでしょうか？」
「秘密の場所でもあるんじゃない？大切な人に渡すならそういう特別な場所の方が記憶に残るから。」

ﾊｳﾚｽ「……。」

ﾍﾞﾘｱﾝ「そういえばこの先は…。」

＊＊＊

さらに尾行してみると、そこは墓場…そしてハウレスは一つの墓の前で止まる。まさか…。

ﾊｳﾚｽ「久しぶりだな…今年も誕生日おめでとう。」