retention ページ6
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卵焼きを突付きながら、岸の恋愛遍歴を振り返っていた。
ふと岸が箸を止めて、騒ぎ出した。
「よー！こっちこっち！」
こちらに向かってやって来ている男に向かって、手を大袈裟に振り上げている。
その男は、オレンジに近い明るいブラウンの髪を手で触れながら、ニコッと笑った。
「イケメンだろ？」
「岸、あんた罪だよ。あんな友達いるなんて私知らない」
藤子の発言に私は頷いた。
イケメンは、真っ直ぐに来て、軽く会釈をしてから、どうも、と藤子の横に座りこんだ。
「こいつはあらんくん！同じ大学なんだ」
岸はイケメンの紹介をした後、次に藤子を紹介した。
「へえ、藤子ちゃん。よろしくね？つうかもう酔ってる？」
「うっそーん！顔赤い？」
「うん。赤いよ」
確かに藤子は頬を赤らめている。だが、それはお酒のせいではなく、あらんくんのせいだ。
ひそかに思っていると、次の瞬間、あるワードが記憶に触れた。
あらんくん…
イケメンの顔をまじまじと見た。シュッとした端正な顔つきは、どう見ても初めて目にする顔だった。
「で、このお前に見惚れてるのが、A」
Aちゃん、あらんくんは口を動かし、よろしくね、と言った。
「突然で悪いんだけど、フルネームは？苗字は？」
「阿部だけど」
「阿部…あらん…」
阿部あらんだと！？
あの、さかあがりが出来ない顕嵐くん。幼稚園のとき、よくいじめていた顕嵐くん。大きくなるに連れ、口数が減っていった顕嵐。
「顕著の顕に、嵐？」
「そうだけど」
「本気で言ってる？顕微鏡の顕に、相葉ちゃんがいる嵐の嵐だよ？」
「うん。そうだよ。なんで知ってんの？」
もう一度まじまじと見る。
この目元…
「待って、待って？A…？A！？」
「顕嵐！？」
びっくり仰天。
私と彼は、目を丸め合った。
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作者名：ももきち | 作成日時：2017年2月13日 15時
