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「あの子、よく飛ぶわね〜!」
「鈴鳴くんだったかしら、まだ小学生でしょう?」
「いつも笑って、楽しそうで…バレーボール大好きなんでしょうね…!」
なんて、周りの人はよく言った。
でも別にバレーボールは好きじゃない。
かと言って嫌いなわけでもない。
つまり“普通”だ。
バレーボールは楽しい、スパイクを決めてもブロックできても、仲間と連携が取れても、全てが楽しさにつながる。
一度同い年の子にじゃあなんで好きじゃないんだよ、と聞かれたことがある。
わかんない。けど俺にとって“好き”と“楽しい”は別物だよ。
そう答えたら意味わかんねー、楽しいなら好きだろふつう!と言われた。
どうやら彼ら、もしくはそれよりももっと多くの人にとって、不思議なことらしい。
楽しいから好き。好きだから楽しい。
たしかにその通りなんだろうな、と思う。
でも俺は別に、楽しいけど好きではない。
みんなそうなのか、と思っていたけど、幼馴染の元也と臣に話したら、こう言われた。
べつにいんじゃない?と。
考え方は人によって違うだろ、気にすることじゃない。
その言葉はストンと胸に落ちて、それ以降あんまり気にすることはなくなった。
俺の父は3歳のときにがんで死んだ。
母が俺とバレーボールをしている8歳上の兄を一人で育ててくれたので、帰るのが遅い兄はともかく、俺は家で一人になってしまう。
それを心配した母は近所の家に声をかけて、俺を混ぜてやってくれないかと頼み込んだ。
俺がバレーボールを始めたのはそのためだった。近所の古森元也、佐久早聖臣の二人がバレーボールクラブに通っていたらしく、それに連れて行ってもらった。
同い年だったし、バレーをしているうちにすぐ仲良くなれた。
ふたりとも優しくしてくれた。
バレーを始めてから、全く興味を持っていなかった兄の部活の試合を見に行った。
兄の姿は自分が思っていたよりもずっと、かっこよかった。
高校生のバレーボールは力強く、今まで見てきたものを覆した。
その姿に、見入ってしまった。
憧れるのに時間はかからなかった。
きっと兄の血が俺にも流れていたのだろう。夢中になって練習すれば、結果もついてきた。
楽しい。すごく楽しい。
練習も試合も全部。
兄のようになりたい。兄みたいに、バレーボールを全力で楽しみたい。
そう思っていた、十歳の冬の日こと。
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あなくま(プロフ) - あっびーさん» ありがとうございます!気まぐれ更新ではありますが頑張ります!澤村さん直してきますすみません (7月3日 6時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
あっびー - コメン卜失礼します!話とてもおもしろかったです!がんばってください!あと澤村が沢村になっていました (7月2日 15時) (レス) @page5 id: 9335c42a96 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - 怜央さん» ほんとですね…教えていただきありがとうございます!実は前にも消えちゃってたのでまた同じようなことがあるかもしれません…気をつけます! (2022年10月14日 20時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
怜央(プロフ) - コメント失礼します!36話が消えちゃってますよ〜! (2022年10月14日 20時) (レス) id: 8acdf4d0f3 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - ありがとうございます!できるだけ早く更新できるように頑張ります! (2022年10月13日 16時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あなくま | 作成日時:2022年9月24日 14時