八首目 チャンス ページ10
「で、かるた部発足に動き出したと。
あってる？」
「あってる、あってる。」
運良く捕まえた岸くんに事情を説明した。
岸くんはカレーの最後の一口を頬張りながらそう聞く。
「で、何で俺はその話を聞かされてるわけ？」
「分からずに聞いとったん！？」と突っ込んだボケボケ具合に俺と紫耀はコントさながらにずっこけた。
頼むから「意図的な」ボケであってほしい。
「だからね、岸くん経験者でしょ？
一緒にかるた部作ってくんないってお誘い。OK？」
「あーOK！OK！
いや、かるた自体はいいけど……」
「岸くん何級なん？」
「一応C。」
「有段ゲット！」と二段獲得の兆しに気分がすこぶる良い。片手ハイタッチかますぐらいには。
そんな二人を少し慌てたようの止める岸くん。
「俺でいいの？」
現在進行形でかるたをやっている人の何が駄目だとゆうのか。数秒前までテンションが高かった二人はきょとんとした顔をしている。
「俺、中学上がる前に埼玉に引っ越しちゃったから。岩波会は一回抜けてんだ。
そん時はどっかで続けるつもりだったけど、アクセス悪いとこしかなくて。
結局なあなあになって、まともには長らくやってないんだ。」
そうゆうことか。
俺たちが勝手に現在進行形だと思ってた彼は、ブランクを気にしているのだ。
「そんなん全然問題ないよ。
こいつなんて五年間近くはやってないんやで。」
「マジっ！？」
親指で指した先の紫耀は両手でピースを作り笑い飛ばしてる。
「今強いかどうかなんてどうだってええ。
これから強くなればいいんよ。」
そう、別に今強い人を仲間にしたいわけじゃない。
確かに強いに越したことはないけど、それよりも断然
畳の上でこの競技を楽しめる人と仲間になりたい。
そう伝えた。
これで岸くんは少しでも安心して、前向きに検討してくれるようになっただろうか。
「あの時、なあなあにしちゃったこと結構後悔してる。」
「うん。」
「どっかで、またやりたいなって思う時は何度かあったけど、チャンスがないって諦めてた。」
ぽつりぽつりと紡がれた言葉の端々には、かるたへの愛着が滲み出て見える。嫌いで、つまらなくなって辞めたわけじゃないから。
空想の中で見えるのは札に触れる岸くん。
きっとこんな風に一心不乱に翔るのだろう。
「またチャンス逃そうとしてる、またやりたいな。」
思わず二人で立ち上がって歓喜する。
もれなく周りの目をかっさらった。
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
