五首目 再燃 ページ7
本当に廉なのか。
いや、向かいで暗記を回すのは高一の廉であって小学五年生の廉じゃない。
「紫耀、早く並べて」
「あっ……うん、」
出札以外の廉が飛ばした札が四枚。
俺の下段のあたりに積まれている。
いや、たまたま得意だっただけかも。そんな無意味な言い聞かせを自らにしたが、それは嘘であったとすぐ分かった。
「ひとはいさ」
俺の右上段にあった「ひともをし」
「ひと」まで俺の陣に手を出して、きっと「H」でそのまま自陣に手を引いて「ひとは」を払う。
見事な戻り手。
ゾクゾクと背筋が震える。
興奮にも似たそれ。
左利き。それが右利きとしては手の出方まるっきり反対で取りずらさを助長する。
結局19枚差で負けた。
最終盤で何とか守った三枚と、大山札の分かれで取れた一枚、そしておそらく廉が忘れていた一枚。
まぐれ含むたった五枚。
それしか廉から奪うことができなかった。
廉のそれは明らかに続けている人の取りだ。
「廉、続けてんの？」
足を崩し涼みながら話す二人。
「おん、
紫耀が辞めて半年後ぐらいに父親の転勤で大阪に戻らんとあかんくなって、秋野は辞めた。
でも、八尾の逢坂会でかるたは続けとったよ。
結局、高校でこっちに戻ったからまた秋野に行くかなって感じ。」
「ずっと！？」
「今年で七年目」
「なん級？」
「B級三段。これでも何回かB級大会で三位まではいってるからな。
あ、今は級制度が変わったからBは三段だけか。」
経験値がまるで違う。
俺の空白の五年間に廉は黙々と強さを磨いていた。
そしてBまで上がっていた。
「なんでそんな続けられんの。」
大会となれば優勝まで一日三キロは痩せると言われる競技かるた。
文化系の遊びではない。
脳をすり減らして何がそんなに……
「楽しいから」
シンプルかつただそれだけだった。
「例えば陸上なら足の速さは生まれ持ったものに左右されるところが少なくない。
スポーツはどうしてもそうやん。
でも、かるたはポテンシャルに頼らない。
本人の戦い方しだいでなんとでもなる。」
だから楽しい。
こんなにも熱弁する廉を俺は知らない。
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払った札は飛ばした人が取りに行き、出札のある陣のほうの人が並べ直すのがマナーです。
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
