四首目 刹那の衝撃 ページ6
ともあれ二人で掃除を終えた和室は気持ちよくて藺草のいい匂いがほんのりとして以外にも居心地がいい。
いそいそとかるた札を取り出す廉。
ひと教室分ぐらいの畳の中心に二人だけ、半分ほど開けた窓から聞こえるは風の音とかすかな外運動部の掛け声のみ。
たった二人だけの世界でこれは何かの儀式。そう錯覚しそうな神聖さがここにはある。
スマホとスピーカーをセットし終えた廉が札の箱を挟んで向かいに正座する。
それにつられて俺も崩していた足を正した。
「「よろしくお願いします。」」
「読手は西谷さんな」
「うん」
「一組やから百枚から適当に25枚取って」
「うん」
お互いに25枚取り終えて、残りの札を箱にしまい利き手の左側に置き、それから上段から下段の位置を決める滑らかな動き。
案外、時間が経過しても自分で組んだ配置は大方覚えていた。
左利き故に左側に札の比重が大きい廉の配置も懐かしい。
「今から暗記時間15分だから3時25分から試合開始です。」
暗記、入れ方は覚えてる。俺はあいうえお順でやってた。
ただ、15分で入る自信はない。
最初の5分を過ぎたところで席を立った廉とは違い俺は時間をたっぷり使った。
「ネクタイ気付けてな。」
「あっ、そっか」
そう言われてワイシャツからネクタイをほどき傍らに置いた。
「失礼しました。」
廉が戻ったのは３分前。
だぼっと着た黒いカーディガンとシャツの袖を軽く折ったあとに、利き手の人差し指で膝を叩き軽くリズムを取っているのが見えた。
「二分前です。」
この合図から素振りをして払う感覚を呼び戻す。
廉は一枚一枚ルートを確認するように素振りをした。
「時間です。」
「「よろしくお願いします。」」
必ず読まれる序歌の旋律。
あぁ、これだ。
それは俺の眠っていた幼少期の記憶を呼び覚ました。
一回目が終わり、二回目の下の句が読まれる。
俺も廉も構えを整えた。
その時だった。廉の纏う何かが針積めたのは。
「つきみれば」
二字決まり「つき」
確かに反応した、体も払いの格好に動いた。
明らかに俺の陣で右下段で俺が近い。
しかし、俺の指先が札に降れるよりもはるかに早く
廉の指先が数枚かっさらって廉ごと飛んでいった。
「……は？」
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神くんはまだ登場しません。
しばらくお待ちください！
次回、廉の段位が発覚します。
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
