三首目 押しに負けて ページ5
「お前！廉はともかく俺はなんで巻き込まれてんの？」
「やって、紫耀は仮にも経験者やん」
「あのなぁ、俺はかるたやめて五年近く経ってんだぞ。」
元々同じ会でかるたをしていた二人。紛れもなく二人の仲が始まったのはその時。
結局、紫耀は一年ほどでダンスに専念すると言ってやめていったが。
とわ言え経験者で、初心者とは雲田の差。
共に部を作るならうってつけの人材だ。
驚いた、そんな前のことを持ち出してくるなんて。
俺は小五でかるたは辞めたんだもう札に向かうつもりはない。
そう思ってはいるが、何分こうと決めた廉の押しは強い。
「ええやん、やろ」
紫耀が落ちてくれない。
こうなったら、
「お願い！一試合、一本だけかるた取ろう！
それで嫌やったら諦める。」
「一本な」
渋々といった様子で紫耀は首を縦に降ってくれた。
これで丸め込めれば、
まるで新しい玩具を与えられた幼児のようにテンション高めに明日試合の約束を取り決めた。
基本設定無気力の永瀬廉はどこ行った。マジで。
・
・
翌日の廉の鞄には「小倉百人一首歌かるた(取札)」が忍ばせてある。
こんな久しぶりに紫耀とかるたが出来るなんて。
せやのに足早に帰ろうとした紫耀の手首を掴んで職員室まで引きずった。
「マジ!?」
「マジ。約束したやろ。」
職員室で名前を名乗り担任を呼ぶ。
加瀬拓真先生、27歳、国語科、1-B担任、漫画研究部顧問。
和泉式部オタクらしい。
「はいよ、どうした。」
「競技かるたやるんでどっか和室借りれますか。」
「また渋いなぁ。和室かぁ、C棟の作法室は茶道部使ってるしなぁ。」
「加瀬先生、離れは？」
確かA組担任の柳井先生がそう提案する。
「あっ、そうですね。」
よっこらしょっとなんだが年寄りみたいにくるくる回る椅子を立って壁にかけてあった鍵を二人に渡した。
「これ離れの鍵。
ちゃんと戸締まりして返せよ。」
「うっす」
何の疑いもなく離れの扉を開けた二人は立ち尽くした。
「これは、汚ねえ」
何年もまともに掃除してなかったらしい。
室内は埃っぽく、所々綿埃がたまっている。
右を見ると廉がワナワナと震えている。
そうだ廉は潔癖だった。
「嫌や！こんな汚いことろでかるた取りたくない！
掃除せんと。」
結局、廉に強制的に掃除機と箒を持たされて俺は畳の掃除、廉は窓や板の部分などの拭き掃除。
俺の時間返せ。
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
