十九首目 彼は目標のA(エース) ページ21
決勝はA,B一組づつ。
広い会場にたった二組。
中盤、場に30枚あたりまでは神が二枚差でリード。
しかし、相手の三字決まり分かれの三連取により逆転一枚差。
でも、また連取し返して、リードして詰められての繰り返しで、ついても二枚差。
「わが…」
カシャン、、
あっッ！
思わず声が出かけたのを慌てて飲み込んだ。
「わがいをは」が読まれて敵陣左上段の「わがそでは」が動いた。
うわっ、、七枚同数でこのお手は、、痛い。
本人以上に周りで観戦している人たちがみるみる青ざめていくのが分かる。
相手が一枚送って、これで一気に二枚差。
しかし、神は涼しい顔で暗記を回している。
「ながからん」
次の瞬間、会場はさっきとは違うどよめきに包まれた。
神の自陣右下段、左下段と分かれて配置されていた「なが」の友札。
その出札「ながか」の方だけが一枚決まり字よりはるかに早く飛んだ。
片方だけ狙って当てにいった？
いや、分かってて出札に行ったんだ。
そこが分岐点になったのか、明らかに神に流れが傾いて、そして、、
「め」
トンッ…
「「ありがとうございました。」」
神が敵陣右下段「めぐりあいて」の一字決まりを払い、相手の上段真ん中あたりに最後の一枚を置いて試合が終わった。
勝った…
暫く余韻に呑まれていた。
札を片付けた神が走ってきて引き戻した。
「勝てたよッ…！」
「おめでとう、ほんま、おめでとう！」
「廉が勝てるって…言ってくれたから…」
よかった。
神の表情がスッキリしてる。
「廉、泣いてるの？」
「えっ…？」
頬が冷たい。
自覚をすると、一本、二本道ができたみたい。
「やって…やって…」
「ふふっ、はいはい。」
神はそう言うと、自分のパーカーの袖で涙を拭ってくれた。
吉野会大会B級優勝
A級昇級
神はまたひとつ手が引っ掛からない場所に行ってしまった。
けれど、今は道程の長さに嘆くんじゃなくて追い付き、追い越すことが楽しみに思える。
例えそれがウォーキングペースだとしてもいつか同じ景色を見れたらいいな。
・
俺は、神とこの先ずっと一緒にかるたができると思ってた。
でも…
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
